BL漫画喫茶『Cafe801』に行って来ました


「なかなかいいところだよー」という噂を聞いて。


池袋、K-BOOKS同人館よりちょっと先に行ったところにある『Cafe 801』(『かふぇ やおい』と読みそうになるけど『かふぇ ハチマルイチ』)に、行って参りました。
BL(ボーイズラブ)漫画が、現在約5000冊ほど置いてあり、だいたい普通の漫画喫茶と同じような感じで、料金を払って好きに読むことが出来ます。
男性の方には残念なことながら、女性専用です。でも、たまに男性解禁日も設けていらっしゃいます(サイトにて営業スケジュールが確認できます。今ちょうど4/30まで男子解禁日)。

コミックカフェ Cafe 801


初めての人はまず入り口にある入会申込書に記入をし、靴を脱いでスリッパに履き替え受付をします。

私は3時間利用で¥1200、1ドリンク付きのコースにしました。
ドリンクはトロピカルティーを選びました。ポットで出していただけるのでゆっくり飲めます。

読む場所を選んで、さあ漫画を探しに行くわけですが、その前に。



私はブログのタイトルにもあるように腐女子の人なんですが、いわゆる「BL」というものには、あまり明るくないです。つか、よく知らないです。

えっなんで!?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


簡単に言えば…私が好きなのは、やおいであってBLではないのです。

Wikipediaの「ボーイズラブ」の項目によれば、

やおいボーイズラブ・JUNE・パロディやおい・同人誌・商業出版の全てを含む総称であるがボーイズラブという単語はもともとJUNEから派生し商業出版で生まれて普及した単語なので、JUNEと同じくパロディやおいとは別ジャンルとして扱われる。
(注:太字ブログ主)

「BL」とは、おおむね「男性同士の恋愛などの関係性を描いた(商業)オリジナル作品」を指す…のが正確かと思います。「やおい」はそれを包括するもっと大きい概念です。

ですが、こちらのカフェの名前が「Cafe801」であるように、現在BL・やおいなどの用語の定義は極めて曖昧で、日々変化し続けています。
例えば、ジャンプで人気のあるキャラクター2人のカップリングの話をする時に「●●と○○ってBLっぽいよね」というような表現をする方も、少なくないでしょう。
やおい」という言葉はそれだけでは意味が伝わりにくいのに比べて、「ボーイズラブ」という表現は外部の人たちにも非常にわかりやすいため、カップリング妄想の概念が広く知られるようになった今、BLという言葉は、ライトなニュアンスで「やおいっぽい」ことを現したい場合に使われる言葉になっているように思えます。

しかし、私が「BL」という言葉を使う場合はほぼ「(商業)オリジナル作品」を指しております。二次創作・パロディ作品は含まれません。
そして私は二次創作・パロディにおけるカップリング的作品を強く愛好し、原作があるところに妄想を付加するのが好きなタイプの腐女子なので、最初からオリジナルな恋愛作品であるところの「BL」には、それほど食指が動かない…
だから私、BL作品、あんまり読んでません。詳しい人が書いたレポートだと思われると困るので、有名どころもロクに読んでない人だということを記しておきます。

腐女子には「BLも二次も両方好きー」という人もいれば、「BLは読むけど二次はほとんど読まない」という人もいます。私の周囲には二次専門の人が多く、BLをかなり読んでる人は、自分でも描いてる人くらいですね…
今回のレポートは「BLには詳しくない二次創作専門腐女子」の感想だということを踏まえてお読みいただけるよう、お願いします。

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上着を脱いで、とりあえず店内をうろうろしてみました。

作品は本棚ごとに「学園」「ギャグ」「芸能界」「ほのぼの」「ファンタジー」など、細かくジャンル別に分けられて置かれています。「ガチムチ」とかもありますよ。
普段BL漫画をあまり率先して読まない私からすると、この置き方は、面白くもあり、これでいいのかなあ…と思わなくもなかったり。
私なら「レーベル分け」か、やっぱり「作者名順」で分けてほしいな〜と思ってしまうのです。
通常、本屋さんでも図書館でもどこでもそれで置いてあるので、そういう状態で探すのに慣れているからかもしれないんですが、私の場合ほぼ「作家指名読み」なので、その作家の作品だけを効率よくピックアップして読みたい場合、これだとものすごく探し辛い。人によっては、縦横無尽に散ってると思うし。
スタッフに言えば教えてもらえると言うけども、いやまあ、その、聞きにくいって人も居ると思う!!

ただ、BL作品全般に親和性が高く、まだ見ていない好みの作品と出会いたい…!という方は、こっちの方がいいのかな…うーん…
 *5月末には検索が出来るようになるとのこと


ぐるぐる巡ってはみたものの、やっぱりあれだ、知らないと結構途方に暮れる。
せっかくだから普段読まなそうなジャンルにチャレンジしよう!と頑張って手を伸ばすも、すいませんでした…ってなったり…
ジャンル「アラブ」とかあるんですよね。中近東の金持ちにさらわれたりするやつ!いや、噂には聞いていた「アラブ」是非拝読したいと思って色々見てみたんですが…
あれ…?おっさん受けのアラブって…ない…??

若干のショックを受けつつ、3時間という時間制限もあることだし、やっぱり鉄板で面白い作品を読みたい!と、既に評価の高い有名どころの作家さんばかりをいくつか読んで来ました。


窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスα)

俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスα)


むしろ「まだ読んでなかったのかよー!!」と突っ込みが入りそうな超名作認定作品です。

水城せとなの作品と初めて出会ったのは、もう13年くらい前かな…?
当時同人活動していたジャンルで水城さんも活動していて、友人が大ファンだったので同人誌を借りて読んだのが最初。
基本的に水城さんとカップリングの好みは合わないんですが(笑)ものすごい情熱の引力を持った作品を描く人だなあ…と感動した覚えがあります。
その後、少女漫画でデビューされたばかりの頃の作品は、正直言ってあんまり面白くなくて…やっぱりこの人は男同士のが向いてるんじゃないかな〜って思ったりしてました(それから読んでないので、その後少女漫画でどういう作品描かれてるかは知りません)。

今回久しぶりに読ませていただいて、さすがあれだけ熱烈な評価を受けるだけのことはある、力のこもった素晴らしい作品だと思いました。読者の首根っこをひっつかんで、ガクガク言わせてやる!くらいの力強さ、吸引力がすごい。

(あんまり読んでいない私が言うのもあれですけど)この人の作品、キャラ造形にはとても魅力的な「危うさ」があって、読者を安心させてくれないんですね。
いったいこの話はどこに転がっていってしまうのか、よもや酷い結末が待ち受けているのではないか、うわーどうなっちゃうの!と、恐る恐るでも急いでページをめくらせてしまう、どこかで足を踏み外して真っ逆さまに落ちてしまうかも、でも墜落する瞬間は例えようもなく甘美かもしれない…と思わせてしまう。
甘え、依存、不安、嫉妬、見栄、プライド、執着、諦め、狡さ、憎しみ、たくさんの醜いものが積み上がって出来ている恋愛という生き物が、主人公たちの間で生まれ、生き延び、もがいたり息をひそめたり飢えて涙を流したりする様を、慎重に慎重に紡いでいったこの作品、名作と呼ばれるにふさわしいポテンシャルでした。

やおいとかそういうものを好きになってしまう人にはなかなか抗い難いウルトラソウルの持ち主だなあ、水城さんは…と改めて感じたりしたのでした。


イルミナシオン (mellow mellow COMICS)

イルミナシオン (mellow mellow COMICS)

現在アフタヌーンで「BUTTER!!!」を連載中のヤマシタトモコ

この方との出会いはやはりアフタヌーンでした。デビュー作の「ねこぜの夜明け前」が初めてで、その時は若干微妙な感想を抱いたのですが、「でもキャラ造形は上手いし魅力的だなー」な感じでした。

この作品集、面白く読みました。でも表題作、雰囲気、キャラ造形のリアリティのバランスが上手いんで読まされちゃうんですけど、個人的にはもうちょっと何か「埋めて」欲しいかな〜〜〜という印象。あの雰囲気でもって完成しているというところもありますが…
一番好きなのは園芸部の女の子の話と、お葬式の話かなあ。あの話好きです。女の子を描くのが上手いタイプの人は、青年誌に進出してきますね。
素直な萌えということだと、あのヤクザの話が一番ですね(キリッ


もろとも (ディアプラス・コミックス)

もろとも (ディアプラス・コミックス)

色んな人から勧められていた西田東。初めて読みました!

なるほど…!!この人は上手いですね!面白い!頭一つも二つも抜けてる感じがします。
今回こちらのCafeで読んだ何冊かの漫画の中で、この作品集のヤクザと刑事の話、好き!ということでは一番好き!(^^)

いつも勧められる時に「西田東おもしろいよ!あ、絵がちょっと…あれだけど」みたいな言われ方をされていたのでどんだけですかと思っていたけど、何だよ全然上手いじゃん騙された!

これが面白かったので、こっちも読みました。

天使のうた (1) (ディアプラス・コミックス)

天使のうた (1) (ディアプラス・コミックス)

天使のうた (2) (ディアプラス・コミックス)

天使のうた (2) (ディアプラス・コミックス)

(すいませんねまたあんまり読んでないのに言いますけど)この人は水城さんとは逆に、登場人物は基本善人ばかりなので、悲しいこと、やるせないこと、どうしようもないことがあったとしても、いい意味で「安心して読める」のがいい。
苦しく叫び出したいような胸のうちを、叫んでいいよ、信じていいよ、だいじょうぶだから!と、約束してくれるような。あっけらかんと、軽やかに大事な言葉をくれる。
強いなあ。すごく強い。何というか、励まされますね。色々と。
ごろんと転がって訳もなく笑い出したくなるような、気持ちのいい作品群でした。

あとこれも噂で聞いていた「後書き漫画まじ面白い」…事実だった。


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さて、そんな感じで『Cafe801』3時間、きっちり堪能させていただきました。くつろぎました。


「居心地いいところだったよー」という話を聞いていたのですが、店内は非常に落ち着いた空気で、うるさくない音楽が流れており、いい意味で「すごく本のたくさんある友達の家に遊びに来た」という感じ。
部屋に通されたら本棚に漫画がたくさんあって、つい読みふけったら何時間も経ってた…という思い出を喚起させるような空間でした。

途中おなかがすいたので、食べ物もいただきました。
ハヤシライスと日替わりカレーがあるのですが、その日の日替わりカレーが「海老と鶏肉と枝豆のカレー」ということで、何それおいしそう…と迷わずカレーに。具沢山でおいしかったです。

「本探すの難しい」以外は、『Cafe801』という空間の満足度は高かったです。価格設定も安いかと。あとカレーおいしいです。


一つ、あえて言うなら…


BLを良く読む方とCafe801の話をしていた時に、「約5000冊」という所蔵数の話をしたら、


「5000冊かあ…」
「…それは、少ないっていうニュアンスですか?」
「うーん、少ないかも」


確かに、実際行ってみたら、「もっともっとあってもいい!」という感じはしました。


まだ小学生だった頃、そういう物語は本屋にほとんど置いてなくて、本棚の隅に数冊しかありませんでした。それを私は探して読んでいました。
それがいつの間にか、ぽつぽつと現れ、レーベルが増え、たくさんの人に受け入れられ、今では本屋の一角をすっかり占領してしまう、大きな勢力になっている。
だから私は追い切れなくて、読まなくなってしまったのかもしれない。二次だけ、そして更に自分の好きな作品にだけ的を絞った。
今もなお増えていくBL作品群は、何か他人事のように私の目には映っています。今でもまだ少し。
それでも、こんな風に、読んでみれば中にものすごく大事なものも見つかる。誰かが大事にしてる何かを垣間みることも出来る。

いったい「そういう作品」が全部で何冊あるのかわからないけれど、既に日本に、世界に、何十万人、何百万人、何千万人居るかわからない、そういうものが好きな人たちが心を震わせる作品は、千の単位ではきかないはず。


もう今更ね。何があっても、減ることなんてないと思うんですよ。



五千と言わず、一万二万と増えたらいいな!
どこかの誰かの好きな作品をどんどん増やしていって、『Cafe801』がもっともっと居心地のいい空間になっていってくれたらなあ…と思います。

(*読みたい作品リクエストが出来るようです!)


あと、おっさん受のアラブが入荷されたら即教えてください。あの、オチとかじゃなくて本気で。


そして、素敵なBL作品を読んだあとでも、やっぱり考えるのは
「あ〜ヤマシタさんと西田さん、映画版『シャーロック・ホームズ』の薄い本出してくんないかな〜(*水城さんはあり得なさそうなので割愛)地球が割れても買いに行っちゃうけどな〜」とかでした。骨の髄まで二次専門。