映画『大奥』観にいってきました

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))


よしながふみ原作の、映画『大奥』観て来ました。


*大きなネタばれはないと思いますが、気になる方はご注意ください。




ちなみに客層:若いような若くないような娘さんたち(*本当に若いと言い切れるような感じの人は居なかった)
       それに、「時代劇だから観に来ました」的な老夫婦…楽しんでいただけたかやや心配です。


上映前に流れた予告編は『GANTZ』と『SP』と、韓国アイドルさんたち?のライブ映画?みたいなやつ?と、あと『雷桜』だったかな。このラインナップと、事前の風評で…そうか、『大奥』ってもしかして、「ジャニ映画」みたいなくくりなのかな?と思いました。実際そうDISっていた方も、ネット上で何人か見かけました。
嵐の二宮さんが主演だからなのでしょうか。自分としては、『硫黄島からの手紙』を以前拝見しておりまして、その演技が好きでしたので、なんかあんまりジャニ的なくくりではなかったのですよね…(テレビあんまり見ないもので、嵐さんとしての活動もそれほど存じ上げないのです…)


で、今回。私は原作既読で、最初に二宮さんの宣伝カット見た時には、水野のイメージとは結構違っておりました。しかし鑑賞しながら話が進むにつれ、いい配役だなあと思えました。
硫黄島』の時も、序盤「演技ヘタじゃないけど、なんか現代っぽい演技…><」とやや違和感を感じていたものの、観ているうちに、すんなりと彼の演じる主人公に馴染めていきました。
二宮さんの演技、好きです(二作しか観てませんが)。


さて映画『大奥』。映画それ自体の出来は…うーん、星3つ、くらいなのかもしれません。
ですが、原作既読の私は十分に楽しめました。


原作『大奥』…けなすわけではありませんが、作者のよしながふみは、決して「絵がすごく上手い」漫画家ではありません。


余白を生かした独特のコマ割りリズムから生まれるキャラクターの内面表現に秀で、もちろん、漫画家としての表現力は優れています。時折くどいネームも効果的で、描かれるキャラクターは通り一遍ではなく、魅力的です。が、単純に画力だけ取り出してみた場合、他と比較してそれがすごく高い作家とは言いがたい。


原作『大奥』はすばらしい作品だと思いますが、よしながふみの画力・もともとの絵柄が設定に追いついていない場面は、いくつかあります。
よく指摘される、水野と鶴岡の稽古の場面。あれを目にしただけで、単行本を投げかけた人を知っています(元剣道部員)。
そうでなくても、絢爛豪華な大奥の内側の背景を、正面からびっしり描ききるのはなかなかに困難だし、またよしながふみはそういう作風でもない(ただもちろん、原作でも当時の風俗などに関する時代考証は入念にされていますし描くべきところでは背景・小物・衣装はかなりきっちりと描かれています)。

しかし、今回の映画版では、それなりにお金がかかっているのでしょう。セット、美術の美しさには目を見張るものがありました。
原作の背景もきちんと描かれてはいるにしろ、やはり実写で作られたものの臨場感とは受ける印象は異なります。江戸や大奥の中の風景。序盤の江戸の町並みを過ぎゆく、大工仕事や飛脚、荒仕事を汗水にまみれてこなす女たちの風景。そして、大奥の中で若く美しい男たちがそれぞれ派手に着飾り、ずらりと並ぶ様の見苦しさ。
これらに時代考証的リアリティがあるかはともかく、原作ではそこまでは及んでいない部分を、セット美術、小物、衣装、そして人間たち。そういった部分で堪能できました。これは私にとっては喜ばしい経験でした。うまいこと補完してもらったなー、という感じです。
これだけでも、原作ファンにとっては見る価値があるのではないかと思います。
(でも、漆黒の衣装を着る場面は原作のほうが美しくかっこよかったと思いますし、原作でごてごて着飾る男たちのみっともない描写などもよしながふみならではという感じで私の大好きな箇所です^^)


役者陣の演技にも、私は特に文句はありませんでした。時代劇で現代っぽい所作をされると気になってしまう方なのですが、今回はさほど気にかからず…その辺のバランスはうまく取れていたように思います。
阿部サダヲさんいい味出してましたねー!玉木氏もぴったりで笑えた。鶴岡とかもよかったー。あ、この方って関ジャニの方なんですか?いい配役だったと思います。ボディいいですねえ。


とまあ、原作既読者の私が、作品世界を補完してもらうには良い映画だったのですが…
原作を読んでいない人が観たら、ちょっとピントのぼけた、ぬるい作品に思えるような気がします。


原作『大奥』は、もっと切れ味鋭く、読者を攻撃してくるような作品なのですが、映画版は水野のエピソードを中心にしているせいか、やや優しいトーンに仕上がっています。あの辺が最後に来ると、どうも甘めに感じられてしまうのは仕方が無い。原作は、厳しくどうしようもない、どうにもならない部分を多数に含む作品であり、そこが強い魅力であるだけに、映画版は本当に、ただ単に男女が逆転しただけの大奥だと感じられてしまうかも。
ここで終わっちゃうのかー、もっと吉宗の活躍みたい!と思ってしまう、惜しい終わりでした。
原作は男性も十分に楽しめる、懐の深い作品だと思うのですが、映画版は正直、男性が観てもあんまり面白くないかも…と思いました。
女性キャラクターのエロティックな場面や魅力ももっと演出してほしかったのですが、それは難しいのかな。


というわけで、原作未読の方は、せめて一巻(できれば二巻まで!)は読んでから行った方がずっと楽しめると思います!
知らずに行くと、ちょっとかったるいかも…



*あと、えーと、この文章は決してよしながふみ氏の絵をDISってるわけではないということを一応強調させてください…そこ誤解されちゃうと困るんで…



最新刊。この作品は、どこまで行ってどこにたどり着くんだろう…

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)