萌え、知り初めし頃に…

友人にこの間「自分がこの世界に入った切っ掛け」「最初にふれた、同性愛を扱った作品」の話など聞いていて、あーやっぱり世代によって特徴があって面白いなーと思いました。そうでなくても、人様の熱いルーツ話は聞いていて興味深く、楽しいものです。


というわけで、いかにして私はこの世界に足を踏み入れたか。



初めてふれた、男同士の表現があった作品は、たぶん「パタリロ!」だと思います。アニメから入ったと記憶しているんですが、パタリロのアニメが放映されたのが1982年からなので、1976年生まれの私が見たのは6歳か7歳の頃?最初はマライヒが男だとはまったく気づいてませんでした。女の人だと思ってた。原作の単行本を読み始めて、あれ?この人男の人?だと。
その、最初に認識したパタリロの原作単行本なんですが…これよく覚えてるんですが、18巻なんですね。1983年発行。


で、18巻がいったいどういう内容だったかというと、バンコランvsバンコランの話で、バンコランが、自分の父を殺したキーンという叔父と対決するエピソードなんですが…
あの、内容覚えてる方は「あれか」と思うかもしれないんですが…18巻って、キーン(男)がバンコランの恋人マライヒ(男)を捕らえてレイプし(しかも自分がバンコランであると錯覚させる催眠術をマライヒにかけた上で)、その写真を撮ってバラまくという、長期連載パタリロの中でもたぶんベスト3に入るくらいハードな描写のある巻なんですよ。
これ、私が買ってもらって読んだのが、たぶん小学二年生の時なんです。確か家族で温泉かなんかに行く旅行の時です。私は小さい頃から本の虫で、本さえ与えておけばおとなしいという子でしたから、旅行とかウザいんですよ。暇でしょうがないんですよ。だもんで、駅の売店だかで、本を一冊買ってもらえることになった。でも、子どもが読むような活字の本は置いてない。じゃあ漫画でもいいよ、で選んだのが、一番字の多かった「パタリロ!」18巻だったのです。アニメでやってるやつだし、いいだろうと母も思ったんだろうなあ(遠い目)


実際自分がそれにどんな衝撃を受けたか、定かでないんですが。そういう細かいことだけよく覚えています。当時買った18巻はぼろぼろでカバーもないんですが、未だにうちにありますよ。
今ふと思ったんだけど、私が「アレな写真を撮られてバラまかれたり、脅迫されたりする」というエピソードが殊のほか嫌いなのは、この辺からきてるのかな?って、ファーストインプレッションがなくても嫌だよそんなネタ。


パタリロ!』はとても好きでしたが特に傾倒することもなく(単行本は家に少なくとも五十冊くらいはあるんだけど、いつ頃から集めはじめたのかわからない。たぶん、中学になってからだと思う)、自分の中で、もっと明らかに男性同士の恋愛話に感銘を受けたのは、小学校高学年になってからでした。
筒井康隆全集No144(1984年発行)『男たちのかいた絵 熊の木本線』に収録されている、『男たちのかいた絵』という連作短編(映画化もされましたね。観てないですが)の中の『恋とはなんでしょう』という一篇です。
いつ頃読んだかは定かでないんですが、たぶん小学校五年生くらい。近くの図書館に入り浸って、筒井康隆全集を端から読んでたのだと思います。


『恋とはなんでしょう』はヤクザの「兄貴」と「弟分」がお互いを慕い合っているというお話で、背の低い、切れ者インテリヤクザの兄貴と、ウスノロでデブでウドの大木で、たぶん一般的には醜いカテゴリのキャラで、「尻におできがある」なんて描写もあるんですが、男にモテモテの弟分が登場します。
弟分は男にモテモテなので、よその組相手の交渉に使われたりします(こいつを好きにしていいから、便宜をはかってくれというような)その度兄貴分は仕方ないと耐えているのですが、ある時弟分が、行為中に誤ってよその組の地位の高い人物を殺してしまいます。
弟分はこうなっては、もう自分の組から追われ、消されるしかありません。兄貴分は自分の組での将来も捨て、弟分を連れて逃げます。

さて、ここからがハイライト。


兄貴分と弟分は、追っ手から逃れて駅のホームに二人で立ち、電車を待っています。
兄貴分は弟分に「これでやっと、二人水入らずで暮らせるな」と言います。
その後の弟分の描写(手元に本がないので、そのままの文ではありません)


「○○(弟分)はうなずいたが、水入らずという言葉の意味はわかっていないようだった」


…!!!!!
水入らずという言葉の意味は、わかっていない、ようだった!!!


当時、この一文に、激しく狂おしく心を突き動かされました…。
そう、今でいうなら「萌え」ってやつですか。震えるほどヒートでした。未だに、心のベスト3には常にランクインする、萌え場面です。み、水入らずという言葉の意味は、わからなかったんじゃー!!
書いててキーボード打つ指が震えるくらい萌える。萌えるっていうか燃える。
二人の未来に、明るい前途なんてないんです。捕まれば二人とも殺される。逃げ切れても、堅気の生活が送れる保証なんてない。そんなことは兄貴は百も承知なんです。でも、たぶん弟分を、そして自分をもいたわろうと思ってかけた言葉。でも、水入らずの意味は弟分はわからんのですよ!!!ああもう!どうしていいのかわからないくらい悶える!!!



私の萌えシチュエーションの原点がここにある。結構、出口ないのが好きなんです。辛気臭いっていうか、もっと言っちゃうと貧乏臭いっていうか。
それで二十代前半に初めて小説を書き始めた頃は、もうそんな話ばっか書いてましたね。(*芸能ジャンル二次創作)あまり詳しくは書きませんが差別ものとか。出口ない逃げ場ない金もない職もないみたいなやつ。
今ではそこまで自分のリビドーを叩き付けすぎた作品は書かなくなったんですが、未だにそういうジャンルのボーイズラブ…今ではこっちの表現が主流になっちゃいましたが、わたし的には「JUNE」の方が近い雰囲気!貧乏JUNE!プロレタリアJUNE!そんな素敵なボーイズラブがあったら私に教えてください(真顔)オリジナルのほうには詳しくないもんで。
貧乏いいよなあ。貧乏好きだよなあ。(実際に貧乏になるのは嫌ですあくまで妄想ですから)金がありゃーぶっちゃけ悩むことないようなことでも、貧乏、食えない、ただそれだけで重い枷として圧し掛かってくる。ああ萌え尽きる。


で、多分同時期に読んだのが、栗本薫の『真夜中の天使』シリーズ。もちろん衝撃ではありましたが、なんと言っても世の腐女子たちが支持しているのは、メインの今西良と対なすキャラ、森田透くんではないかと思います。例にもれず私もです。
彼がメインの『翼あるもの 下』は、これまた私の滾るシチュエーションの原点となる名作。良にはいまいち感情移入できず何こいつと思っていましたが、やることなすこと裏目裏目の透は共感しやすかった。
何が萌えって、スレっからしの透くんが初めて本気で好きになった相手、巽さんが、透が誰よりも嫌っている、「あいつのせいで自分はうまくいかない」と思っている良のことを本気で好きになってしまうところ。しかも、巽さんが良と仕事一緒になった時点で、それを予測している透。きっとこの人もあいつを好きになる、そう思いながらも、本当に巽が良に心奪われていく様を目の当たりにして苦しみ、ついには巽の前から姿を消す透。
でも、仕事ほっぽりだして憔悴した様子でいなくなった透を探し回る巽を遠くから見つけて、出て行きたい、と思いつつもそこから逃げ出す透。

…わー

書いてて涙滲んできたよ!!!


「ドリを歩いて」の「妄想する人って、好きです」http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040813#p3で書いた、私の中にある「好きな人がいるけどあんなすばらしい人が私なんかに振り向いてくれるわけないじゃない陶酔」は、どうもこの辺に端を発しているような気が…


三つ子の魂百まで。


さて、『翼あるもの』は続編がありまして、『朝日のあたる家』というのですが、私はこれが好きでですねー。うん、好きでした。四巻読むまでは。
四巻読んでねえ…  透がさあ、良に行っちゃうでしょ…それがねえ…あまりにも腰砕けしちゃってねえ…
初出調べるのに検索したら、五巻が出てるんですね!いや、いいや。もう読まなくても…
良ってさあ…栗本薫大先生が、イコール自分であるとまで感情移入しているキャラなんですよねえ…そうかあ…ふーん…とか思ってしまってですねえ…
なんとなく、主人公の設定を美貌で頭脳明晰でとかして、逆ハーレムなドリーム小説…とかそういうものを連想してしまったのは内緒にしておきます。


とにかく、『翼あるもの 下』は好きです。


竹宮恵子とか萩尾望都の作品を読んだのはもう少し後、愛蔵版が本屋に並んだ頃だったから(*当時、書店の漫画ビニル掛けが進んだために、大人向けハードカバー売り場に置いてあったこれらの愛蔵版しか立ち読みができなかったためと思われる)『トーマの心臓』を初めて読んだのは、1989年に出た、文庫ではない豪華なハードカバーのものです。ということは、13歳の時だ。やっぱり『真夜中の天使』よりは後ですねえ。
ええ、物凄い感動でしたよ。ちょっと読むだけのつもりだったのに最後まで全部かぶりつきで読んだもの…
風と木の詩』は同じ小学館叢書で1988年から出てます。ということは、こっち読んだ方がたぶん早かった。『イズァローン伝説』も1989年より刊行、これも立ち読みで読破しましたねー。後に全巻揃えましたが。


とまあ、こんな感じです。1976腐女子。まあ『恋とは何でしょう』はともかく、『真夜中の天使』シリーズを通ってきた方は多いんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。


同人パロディの世界に初めてふれたのは、ふゅーじゅんぷろだくと発行のキャプテン翼アンソロジー『つばさ百貨店』でした。1987年発行。11歳の時かー。小5だな…


同人歴、17年…か…


こうしてちゃんと発行年で区切ると、おぼろげだった記憶が鮮明になりますね。とりあえず、今回はここまで。