バカ姉弟実写CM化、しかもピエヌ


バカ姉弟』が初映像化。しかも実写。しかもCM。演出は木更津キャッツアイの人。8/9から四日間、TBS系深夜ドラマの枠内、資生堂ピエヌのCMとして放映される。四日間で話は全部違うとのこと。なにそれなにそれ。今ヤンマガ立ち読みしてきて、ハシラ暗記してきて急いで書きました。
普段ほとんどテレビは見ないしビデオも壊れて久しいんですが、これは見ないとなあ。忘れそうだけど。
ピエヌの公式サイト見てきたけど、今のところ情報はありませんでした。

ピエヌはコンセプトやカラリングはいいんですけど、値段帯がそれほど高くないので質がいまいちで。具体的に言うと、アイシャドウの粉もちが悪い。すぐ粉飛びするしよれるし。だからいつも、雑誌で色の説明だけ見て手持ちのアイシャドウの似た色を組み合わせて「なんちゃって今季ピエヌ」とかやってました。最近はすっかりコスメ熱も落ち着いて雑誌も買わなくなったもんで、あまりそういうこともしませんが。
とりあえず日記で件のピエヌのアイライナー買ったと言ってた友人、注目ですよ!って『バカ姉弟』読んでんのかな… 

ええと

何人かの方々に昨日の文章を肯定的な感じで紹介していただきました。ありがとうございます!
ブログってすごいね!といかにも初心者っぽく興奮したりしております。いつも閲覧しているような有名サイトさんでまで紹介されていて正直ガクブルものですが、何がうれしいってやっぱり「emifuwaさんおすすめのおお振り、買ってみます」と言ってもらえたことかもしれません。

すいません、以下の文章、一応いくつかに区切ってはあるんですが、もんのすごく長いです。ほんと、興味ない人は無理に読まなくていいんで。
ちょっと風邪気味で,喉が痛くて文章も弱そげというか低調というか…
まあ、どっちにしろ読みやすいまとまった文とか書けないんで申し訳ないんですけど。

野球漫画が好きなんです

先日は腐女子としての私がおお振りボーイズ棚置きちょっとどうよ?という意見を書きましたので、
今日は腐女子以外の私がちょっとどうよ?という意見も書いておきたいと思います。

私は野球それ自体はそれほど好きではないのですが、
球漫画は大好きです。大、大、大好きです。
比較的新しめのものから列挙しますと、やっぱり『キャプテン』『プレイボール』大好きです!小学生の頃アニメ見てて即ハマり。谷口くんは未だに理想の男子です。そういえば、それよりちょっと後には『名門!第三野球部』もやってましたね。EDまだ歌えるわ…『キャプテン』のOPなんか二番まで歌えます…
順序バラバラでアレなんですけど、こせきこうじ『たろーくん』『やまだたいち』も大好きで…たろーくんは、好み普通すぎて申し訳ないんですけど鉄板で辰巳とか。やまだたいちでは何でも出来る弟がやがてダメ兄に追い越される葛藤とか!!あーー!たまらない!!
原秀則の一連の野球ものも『ジャストミート』『ふぁうるちっぷ』ああ、また読み返したいなあ。ラストがトレンディドラマみたいなんだけどやっぱり好きだ。『やったろーじゃん!』『青空』なんかも好きでした。
『タッチ』や『H2』なんかは私の中では野球漫画ではないんですが、読んではいます。
あと当然、水島新司も一通り。殿馬ラブ。あぶさんも野球狂も男どアホウも平成野球草子なんかも。
とりあえず代表的なものでこのくらいにしといて、だいたいこの辺のは全部全巻揃えているんですけど、でも最近はあんまりハマれる野球漫画ってなかったんですよ。ミスフル読んでないし、MAJORは最初読んでたんだけどフェイドアウトしちゃって…

それだもんで、『おおきく振りかぶって』が出て来た時はすごくうれしかったんですね。うわ、久しぶりに面白い野球漫画読んだ!と心から思えて。
あともちろん今はあれです。『おれはキャプテン』。コージィさんはヤンサン時代から好きな作家さんだったんですが、『ティーンズブルース』の続きも描いてほしいんですが、『砂漠の野球部』も大好きですが、やっぱり『おれキャプ』はしびれましたね!内容もさることながら、ところどころのちばてつや/あきおへのリスペクトっぷりに骨抜きにされました。二巻の表紙とか最高。
コージィさんが別名で原作やってる『ショーバン!』もいいし、あとイブニングの島本和彦さんの『ゲキトウ』も好きです。『逆境ナイン』も当然大好きで。
だから、男の人に「最近面白い漫画ある?」と聞かれた時は必ず「今は野球漫画が熱いよ!『おお振り』と『おれキャプ』おすすめ!」と答えていたのです。(女の人に聞かれた時も同じ答えだったけど)

おお振りは一巻が出たところで、大事なとこじゃないですか!これからどんどん、新規読者を開拓していきたいじゃないですか!面白い野球漫画を待っている日本全国のこどもたちと大人たちをノックアウトしてほしいじゃないですか!おれキャプはマガジンだからこどもたちに伝わるパイプも太いけど、おお振りはなー。アフタヌーンだしな…正直一巻の表紙の装丁いまいちだしなー。でも、もっといっぱいの人にこの作品の魅力,知ってもらいたいなー
とか思ってたんです、一球漫好きの私。

でもそれがさあ、ボーイズの棚で販促て。最初からそれて。
そりゃないよ…と…しょぼーんて…してしまったのですね…

こうやってつらつら書いていくと…とっても個人的な理由ですね…
でもさ…でもさ…好きなスポーツ漫画さあ、いきなり一巻からボーイズの棚に置かれてたら、やっぱり人間、少しはへこみませんか?私は…へこみます…『オフサイド』とか置かれてたらえれーへこみます。
ボーイズがイヤだとか…そういうことでなくて…あの、そういう販促の仕方も,アリかなあと思わないでもないの。最初はとっかかりが大事だし、とりあえず売ってしまえば後はその作品自体の魅力でノックアウトしてしまえばいいだけの話だし。そう、まったくもって個人的な意見ですよ…ただの一読者が、差し出がましいとも言えますよね。

***

もしかして混同している人もいるかもしれないので整理しておくと
事の発端となった書店
(児童文学『バッテリー』の文庫版と『おお振り』を並べてビーボーイなどが平積みしてあるBLコーナーに置いてあった。どこの書店なのかは不明)
と、新宿の山下書店
(『おお振り』をBLコーナーに置き、「BL」「耽美」などの単語が含まれるPOPを付けて売っている。『バッテリー』を強く推す担当者がいるため、また別の場所で「あさのフェア」を展開しているらしい)
は、たぶんに別の書店です。


ある方から「山下書店のって、もしかしてこれですか?」と
http://www.webdokusho.com/koushin/nagashima.php
このURLを教えてもらいました。
ちょうど今日この記事がアップされたみたいですね。「16回目」というやつです。
はい、『おおきく振りかぶって』(大きく、じゃないですよ!)と『バッテリー』を並べて売るのは、個人的にも非常に好感が持てます!
でも、ボーイズラブの棚にまで「おお振り」置かなくていいです…個人的にはちょっとやめてほしいです。

山下書店の「あさのフェア」の担当さんは『バッテリー』を随分愛していて、いろいろ苦労して仕掛けていらっしゃると聞いてはいたのですが…
(このページから「前のページへ」で「13回目」まで行ってください)
正直、この「文学好きの若いお姉様」への説明文、どうなんでしょうか。
豪が野生児って、いつからそんなキャラになったんだろう…気付かなかったけど。体が弱く天使のように素直に兄を慕う巧の弟“青波”どこの誰ですか?それは?
どうして、下の三十代以上サラリーマン向け説明文と一緒じゃいけないんだろうか…。

あーあ…



で、どうして私が何日か前からなんでまたこんなに憤っているかというのを、先日おお振りを読んだばかりの友人が簡潔にまとめてくれたのでそれをそのまま引用します。自分で整理整頓のできない無能ですいません…

・良質の作品が書店に「BL」と宣伝されることにより、
未読のBL読者からは安易にBLとして受け取られる危惧、
また未読の非BL読者からはBLとして敬遠(軽視)されてしまう危惧 と、

・良質な作品を単純にBLの語で売ろうとする書店側の不見識さ、
身内の会話を対客の空間で披瀝する意識の低さ、
様々な方面への悪影響を考慮しない無神経さへの憤り

が怒りの焦点なんだな、と(私なりに)思いました。

やっぱりBLジャンルでないものを
仮に善意にしろBLと銘打って(打つように)売るのは、
一利を求めて百害をもたらすようなものだと
改めて思います。
真に「おおふり」を求めている(と思う)小中高生が
引いちゃうような売り方はしてほしくないな、
と思いました。

そう、彼女からはこういう意見も。

アフタヌーン」に載っているのが不思議なくらい、
直球なスポーツ成長漫画だと思いました。
(ビルドゥングス系っていうの?)
もっと小学生中学生に読んでほしいよね!
でもアフタヌーンってなかなかその層の子は読まないと思うので、
そのへんがもったいないなあと思います。
夏のオススメ図書のとこに置いてほしいよね。

私は中学三年のときに、
転校して、全然知らない人達のなかで
一年部活動したことがあって、
それはもう史上最悪の一年だったのですが、
(諸々わけがあるんですが割愛しますが)
後半の試合のあたりを読んでて、そのときのことを思い出しました。
私はマネージャーだったけど、
部内に誰も味方がいないという状態は
ベンチにいてさえとても気が滅入るものだったので、
それが投手の立場だったら本当に壮絶だっただろうな、
と思って、
三橋が阿部のリードで投げていき、
一人じゃないんだ、と実感するところなどは
かなり心中じわっときました。

(全然本編とは関係ないんだけど、
やっぱり過去の関係を清算できる高校に行くのは正解だよね!!!
などと力強く思ったり(笑) )

いい仲間と出会えて三橋君はほんとに良かったよね。
きっと、部活や学校で辛い思いをしたり悩んだりしている
生徒さんは非常に多いことと思うので、
そういう人たちにとても力を与えてくれる作品と思うのね。
もっと、その層に認知してほしいなあ! と思います。

私も、今日は腐女子としてでなくて一球漫好きとして…
おお振り、普段ジャンプやサンデーやマガジンを読んでいるこどもたちにも
読んでほしいなあと思います。
腐女子はほっといても、アリのようにたかりますんで。ほんと、お気をつかわず。

腐女子の与える不利益

昨日の「腐女子の挟持」では、「腐女子は、自分の如何ともし難い欲望のために、原作をわざと歪めて受け取っていることをわきまえている、と思いたいです」と書きました。
しかし、現実にはそうでない人がたくさんいるのも、多分に事実です。

いろんな人がいます。ディープでコアな百戦錬磨の達人から、友達がやってたんでー、ちょっと面白そうだったからー、で入ってきたライトなビギナーまで。コミケットの参加人数が膨れ上がったのと同様に、同人女(書き、読み、地方でアンソロと通販だけ、など各種全て)の数も爆発的に増え、大多数がいわゆる腐女子、男性同士のカップリングを好む人たちです。
なぜか、ノーマル(=男女のカップリング)の人は、自己紹介する時謝ったりします。「ごめんなさい、ノーマルなんです」いや、謝ることないですからあなた原作通りじゃないですか。もちろん、私たち腐女子は原作通りじゃないからっていちいち謝っていたら日が暮れてしまうのでやりませんが、心の中では、「原作者に対する、大変に申し訳ない気持ち」は、存在していると思います。思いたいです(またか)


おお振り』のボーイズラブ棚置きに関して私が異常にじたばたしてしまうのは、こんな話を小耳に挟んだからでもあります。(聞いた話ですので、細部が違っているかもしれません。当事者がいらっしゃいましたら、お詫びして訂正いたしますのでお知らせください)

一般のファンが集まる『おお振り』について語り合うスレッドで、(自称)「腐女子」が
「デビュー作(『ゆくところ』)がホモなんだから、作者のひぐち先生は腐女子に決まっている」と強く主張し、スレッドの住人たちを困惑させた、というのです。
それがどの程度本当なのか、その後どうなったのか知らないのですが、それを聞いた時、腐女子の私は「うわーーーー!!!やめてーーー!!!」と悲鳴を上げました。
危うく、そのスレッドを探して
「違います!腐女子はこんな人ばっかりじゃないんです!こんなこと思ってるのこの人だけです!!腐女子は!!腐女子はー!!!(号泣)」と書き込みたい衝動にかられました。やりませんでしたが。
日本の誇る大和腐撫子は、いったいどうしてしまったのかと!
武腐(もののふ)の心意気は、どこに消えてしまったのかと!


まず、『ゆくところ』を例にあげて「だから腐女子」というのはとんでもない誤読です。『ゆくところ』を読めばわかりますが、あの作品にボーイズラブ的要素はほとんどない、と言っても過言ではありません。そう解釈することは、作品への冒涜にもあたるでしょう。言いがかりも甚だしい。
ホモセクシュアルを描くことと、腐女子的なパロディやボーイズラブを描くことは、まったく別物です。(作者によってはその辺の境界が曖昧だったり、どちらからも受け入れられるような内容であることもありますが)
よしんば、一億歩譲ってひぐち先生が腐女子であったとしても、『おおきく振りかぶって』の作品の主要なテーマは「男性同士の恋愛」ではありません。講談社のメジャーな青年誌向けに描かれた野球漫画です。斬新な切り口は多々あれど、繊細な心理描写も多々あれど、基本的にまったく腐女子的要素を目指していないことは、誰が読んでも明らかです。
そんなわけで、一腐女子であり一おお振りファンである私は、その話を聞いて暗澹たる気持ちになりました。スレッドで楽しくおお振りについて語り合っておられたであろう、一般のファンの方や、男性ファンの方に申し訳ない。腐女子と名乗る人物がそんなご迷惑をおかけして、さぞかし困惑されただろう。あー、また「これだから同人女は…」って言われちゃうよー。イヤだよー。
いくらなんでもそんなアホいるか?腐女子の評判を下げる陰謀なんじゃね?と半ば本気で思ったくらいです。
腐女子だって、萌え話してる時に突然野球に詳しい男性が入って来て、野球話はじめたらひいちゃうでしょー。ここはそういう話するところじゃないんだよって。場をわきまえようよ!忘れちゃいけないよ!原作を無視して勝手にゆがんだフィルターでカップリング作って妄想して楽しむのは、世間的に認められた行為でもなんでもないんだよ!



以前私はあるゲームジャンルで同人サイトを運営していたことがあるのですが、同人活動には比較的寛容だったソフトの販売元から、ある日突然
「同人サイトはURLを送ってくれ。こちらで内容が適切かどうか審査する」
みたいなお触れが出されたことがあったのです。
当然ですが、ジャンル内は騒然。大きくはないですが小さくもないジャンル、腐女子サイトはかなりの数です。「なんで突然」「いきなりひどい」「審査なんか通るわけないよ!」と蜂の巣をつついたような騒ぎになりました。
当時私も到底道徳的とは言えないような内容のサイトを運営していたため、大きな反発を感じました。検閲かよ、笑わせんな!みたいな…
ははは、恥ずかしいですね。消えてしまいたいです。

しかし、のちに販売元から説明がありました。
「海外の取引先が、うちと交渉する前にうちのゲームの名前で日本のサイトをいろいろ検索してまわったところ、男性同士のキスシーンやらポルノまがいの映像が多数ひっかかった。『そちらでは、こういうゲームを作っているのか』と尋ねられ、対応に困った」

血の気がザッと引きました。
私らのせいで、販売元が営業するのに大きな不利益を被っている!!!
私らの勝手な欲望と妄想のせいで。お目こぼししてもらっていたオイタのせいで。そのくらいいいじゃない、表現の自由でしょ、妄想する権利を奪わないで、そんな手前勝手な思い込みが、甚大な被害をおよぼしている。
先にゆってよ!先に言ってくれればさ、私らも変に反発したりしなかったのに…そりゃもう完全にこっちが悪いです、スンマセンした。

だってこれで、発売元の会社が海外の取引先と上手くいかなくなって、そっちで売れなかったりして、予算とれなくなって、それで新作のクオリティが下がったり、変な規制かかってつまらない内容になったり、最悪出なかったりしたら!!
大好きで大好きで、このゲームが大好きでだから同人までやっちゃってる自分も、そして同人なんかやってなくてただただこのゲームが好きで好きで、新作出たら徹夜でやり込んで、裏ルート見つけて、レアアイテム集めて、そんな全国のファンに申し訳なさすぎるじゃないですか!謝っても謝りきれないじゃないですか!

今はそのジャンルを離れてしまったので、まだこの審査制が生きているのか知りません。実際審査してもらったサイトによると、トップにきっちりはっきりと注意書きをし、18禁表示も明確になされていれば、かなりアレなコンテンツでも問題なく審査を通ったそうです。(実は私はテキストサイトであったのをいいことに、結局審査申請しなかった…でも、注意書きは発売元の指示を忠実に守ってかなり強化したので許してください)


忘れちゃいけない、腐女子的思考は、決して世間一般に受け入れられたものではない。いくら腐女子の人数が増えてもそれは同じこと。
多いから正しい、は正しくない。みんなやってるから、は言い訳にならないのです。
腐女子は、自分の妄想が決して一般的なものでなく、多くの人に不快感を抱かせるおそれのあるものだということを自覚していないと、愛する原作をぶち壊しにしてしまうこともあり得るのだということです。

二枚のレンズを持つ者

上の続き。
でも、それがよくわかんなくなっちゃう気持ちもわかる。わかるのです。
1976年生まれの私が初めて本屋の片隅で同人アンソロを買ったのは小5(小6かも)の時。まだ仲間を見つける手だても少なく、普通の少女漫画を読む友達の中で、こんなのが面白い私はおかしいのかも、と思っておりました。誰もが一度は通る道です。

キャプテン翼聖闘士星矢サムライトルーパー、どんどん腐女子の数は増えて、アンソロの種類も増えて、だんだんと本屋の棚を侵食しはじめました。ビーボーイが創刊されたのはいつだったのかなー。表紙が江ノ本瞳だったのをよく覚えています。
いつのまにか本屋にはボーイズラブ専門の棚が出来てました。腐女子なのに、やたらボーイズを強化している本屋は足が遠のいたりして。あられもない表紙が平積みになっているところから、未だに目をそらし気味。その脇には、ジャンプの漫画の同人アンソロジーがズラリ。華やかでセンスのいい表紙のそれらを目にする度に、同人なんてカケラも知らない、小学生や中学生のワンピやナルト好きの男の子が買っちゃったらどうすんだろ、と思います。


私より世代が下の腐女子腐女子という呼称が普及したのもごく最近ですよね。せいぜいここ四五年じゃないかなあ)は、もうアンソロ平積みは当たり前、ボーイズラブの棚があるのは当たり前の時間を過ごして来たんですよね。そりゃあ、認識違って当たり前でしょう。
自分たちの中から自然発生的にどうしようもない衝動や焦燥が生まれて、それを、どうにもならないから男同士、パロディという形で昇華(というと語弊があるかもしれないが)してきた世代と、もともとそれが周囲にあって、パターンも各種取り揃えてあって、自分の好みに合致するものをお好きに選べて、ネットでキーワード検索一発発見、みたいな世代と、認識の差があるのは当然。
私の時でさえキャプテン翼ブームはもうかなり盛り上がっていたから、割に普通に同人誌があった頃だったと思います。でも、今みたいにボーイズラブ雑誌がたくさんあるような状況になるとは、当時は夢にも思いませんでした。ずっと日陰の、一部の、マニアの趣味なんだろうと思っていました。
今でも本当はそうなんだろうと考えています。ただ、人数がもの凄く増えただけで。


人数が増え、腐女子をターゲットにすることがマーケティングに加わり、「そこにないものを見ようとする」腐女子的視点は、多くの人が気軽に選択できる娯楽のひとつになったように思います。それに重きを置くのも自由、ただライトにちょっと毛色の違ったロマンスを楽しむのも自由。捨てていくのも大事にするのも気軽に消費するのも、自由です。


私の考えるところでは、腐女子とは二枚のレンズを持つ者です。一枚は、一般人と同じふつうのレンズ。これで原作を読みます。普通に楽しみます。すごいなあ、面白いなあ。とか思います。素直に感動したり、時には批判したりもします。
二枚目が、ゆがんだレンズ。ここには、その人の中のいろいろなものでレンズの表面が微妙にゆがんでいます。受け、とか攻め、とか映っているのが見えます。妄想が加速します。
ゆがんだレンズがなければ腐女子でないのですが、ゆがんだレンズだけでは、あまりに貧しく幅の狭い、限定された視点での読書をすることになってしまいます。
「オレはお前がスキだよ!」「オレもっ 阿部君がスキだ!!」(『おおきく振りかぶって』より)という会話の一部を取り出し、腐女子思考で楽しむのもいいでしょう。でも、それだけではおお振りの魅力を楽しみ尽くすことはできません。
腐女子レンズしか持たない人は、二次創作をするにしても、表現する作品世界に限界があると思います。また読み専であっても、腐女子レンズしか持たない人は、腐女子的二次創作の魅力の全てを楽しみ尽くすことは出来ない、と私は考えています。二枚のレンズがあってこそ、腐女子は楽しいのです。
だって、大好きな素晴らしい原作を、一粒で二度楽しめるのが腐女子なのです。ただそこにあるだけで面白い原作を、更にもう一個の視点で楽しめる。リーズナブルかつエコライフ。腐女子はいつでも自給自足です。


ですが、忘れてはいけないのは、腐女子的視点というのはあくまで世間から見て二次、三次、それ以外の視点であって、腐女子的視点が存在することによって、おおもとの作品の正しい理解が脅かされるようなことがあっては、いかんのですよ。
腐女子的視点」は「意図的な誤読」なのですから。
二次創作同人における腐女子的視点は、原作があることによって成立しているごく狭い範囲での好事家の世界です。原作がなければ、萌えれません。原作がなければ、腐女子はそこには存在しないのです。


しかし、同人をやる人が増え、人気作家も増え、魅力的な同人作品が生まれてくると「原作を知らずに同人誌、同人サイトやってる。読んでる」という人も増えます。
ちょっと信じられませんが、テニプリをコンテンツに置いているサイトの管理人さんが「単行本一冊しか持ってないけど(買うつもりもない)」と発言していたのを見たことがあります。え、テニプリって、それなりに巻数重ねてるよね?かなりの衝撃でした。
そういう人は、原作を普通に読む一枚目のレンズがありません。腐女子レンズだけで萌えを育成することになります。
原作はそんなに好きってわけでもないけど、キャラ萌えでサイトやってる。あの作家さんの描く●●×□□が好きだからやってる。
気持ちは分かります。私もそういうきっかけのハマり方をしたことがあります。作品が好きというよりも、△△さんの描く●●×□□が良すぎて…ということ、ままあると思うんです。
でも、実際自分で(それほど好きでもないのに)同人活動をしようとすると、盛り上がっている時はいいのですが、萌えが供給されなくなると途端に飽きたりしてしまいます。また、同人活動でイヤなことがあったりすると、面白いほど簡単に萌えが萎みます。
原作への(腐女子レンズを通さない)愛があれば、「でも、私はこれが好きだもん!好きでやってんだもん!」と復活もできるんですけど、腐女子レンズのみの萌えだと、いざという時の踏ん張りがきかない。萌えにも耐性がないのです。芯が通っていない状態と言いましょうか。
二枚のレンズを持っていない人は、腐女子としての萌えすらも継続することが出来ないのです。


でも、これだけ同人作品やボーイズラブ作品が増えてきてしまうと、「それしか読んだことない」「普通の漫画はジャンプ系くらいしか読まないけど、同人誌はいっぱい買う。読む」という層も確実に増えて来ていると思います。特に小説は「普通の小説はまったく読まない。読んだことがない。でも同人二次創作テキストは好んで読む。ボーイズラブ(この場合二次創作でないオリジナル作品を指す)も読む」という方を、少なからずお見かけしたことがあります。
それが悪いというのではなく、やはり同人誌や二次創作が身近にある状態でオタになった世代と、そうでない世代とは、認識にかなりの齟齬が生じてしまうのは、仕方のないことなのだと思います。
逆に、年が若くてもオタスピリッツ満載の方もいれば、私たちより上の世代でも娯楽として萌えを消費できればいい、という方もいらっしゃるでしょう。最終的には個人差なのでしょうが、置かれた状況の差による世代間の温度差はどうしてもあると思います。


あとそう一つ思った、
百戦錬磨の、酸いも甘いも噛み分けたような、生え抜きの腐女子(どんなだ)が、日記で
「●●見た。とりあえず▲▲は受け決定」
と、どんな些末なことでもカップリングや攻め受けを決定するような態度を取るのは
ある種の自嘲であったり、腐女子である自分をネタにして楽しんでいるのであったり、実際それほどそうは思ってなくても腐女子のたしなみとしてとりあえず攻め受け認定しときますか、的な態度、言うなればポーズであることが多いと思うのですが、
尊敬する同人作家さんが日記でそんなことを書いていると、年若い世代が「この人は本気でこう思っている」と考えてしまっても仕方が無いところもあるかなと…
いや、たぶんその人は本気でもあるんですけど!でも、それが外部にも通用すると思われてしまっては!困るわけで!
あの素晴らしい作品(二次創作)を描いている人もこんなことを普段から考えている=それでいい、それがカッコいい
とかになっていることも、もしかしたらあるのかなと…少し思いました次第です。
つまりあれだ、「締め切り近くて寝てないー」と呟いてみるのがカッコいいとか、同人ごっこ、作家ごっこをしてみたい女の子ちゃんたちに憧れを抱かせる対象としての「腐女子ポーズ」というのがあるんじゃないでしょうか。
腐女子」であることが「他人と違う自分」を演出するための一要素であったり。
そんなことをしなくても、誰とも語り合わなくても、腐女子腐女子以外の何者でもないんですけどね。
自分が、まごうことなき、卒業することのない永遠の腐女子であることは、もうなんつか、ネタにしなきゃやってらんねえんだよと思う卒業できない1976腐女子であります。


腐女子であることって、本当に、自慢にはまったくならないです。
変態ですもの!お天道様に顔向けできない、一般人から見たらキモいだけの、原作を自分の欲望のために誤読して夜な夜な楽しんでいる、気味の悪い人です。他人に説明しても、理解してもらえない自信あります。自覚してます。
でも、自分で選んだ道です。普通の生活を犠牲にしても、お盆に休み取るのにイヤな顔されても、自分の責任で自分が選んだ道です。
楽しくてしょうがないです。やめられない止める気ないです。


だからこそ、自分の欲望は、自分の責任で楽しむ。関係のない他人(=普通の読者)を巻き込まない。腐女子視点を押し付けない。
他の人は違うかもしれませんが、私の考える武腐(もののふ)の心意気は、そんな感じです。