わからないづくし未知の世界/ドリーム小説

オタ友人と御飯を食べていた時に、ドリーム小説の話題になった。

とはいえ、誰もドリーム小説を愛好している人はいない。かなり大勢でオタ話に興じているときでも、ドリーム小説を「好きで」「よく読む」という人にお目にかかったことがない。「私はわからないが、友人がドリーム小説を好きだ」という人すらいない。というわけで、ドリーム小説を愛好しているという人にその理由や魅力を尋ねることができないのだった。


そもそもドリーム小説というものを知ったのは、正確にはわからないが二三年前だと思う。某ジャンルの検索サイトで、カテゴリ別キーワードで検索をしようとした時に、「ドリーム小説」というカテゴリがあるのに気付いた。
それまでにも「ドリーム小説」という単語を目にしてはいたのだが、「ドリーム=妄想」と勝手に連想して、ドリーム小説とは、私が普段愛好しているような「男同士の二次創作のテキストのもの」だと解釈していた。どうも違うらしいと、飛び込みでいくつかのドリーム小説サイトを閲覧して判明した。


知らない方のために説明しておくと、と書き出そうと思ったけれど、正直自分の考えているドリーム小説像が、正しい(一般的な)ドリーム小説像なのかわからない。その程度の認識の人が書いている文章だとこころえて読んでいただければ幸いです(間違っていたら指摘していただけるとうれしい)


ドリーム小説は、わたしの知っている限りでは
漫画なりゲームなり小説なりの男性キャラクターと、自分自身の疑似恋愛小説なのだと思う。
ドリーム小説作者は、名無しの女性と男性キャラクターの恋愛模様をだいたい短編形式で書き、読者は名無しの女性を自分になぞらえて読む(もしくは、読む前に自分の名前を入力すると、小説の中では名無しの女性がその名前で表示されるようになる)
違っていたら申し訳ないのだけど、こういうイメージ。
ドリーム小説をつかみきれないのは、私含む私の周囲の人間がドリーム小説にまったく興味がないので、ドリーム小説サイトをまわってみようという意欲が起きないからだ。
そもそも、ドリーム小説を二次創作の腐女子たちと一緒にしては、ドリームの人たちは怒るのかもしれない。もしかしたら自分を男性キャラになぞらえてボーイズラブ世界を繰り広げるドリームというのもあるのかもしれないが(好きなテキストサイトで一度見かけた事があるが、これは表現の手段のひとつといった印象で、実際その人がドリームを愛好しているわけではないらしかった。その作品はなかなかよかった)今のところ見たことはない。更に言うなら、男性が管理人で女性キャラクターとのドリームを置いているサイトというのがあるのか、ないのか、多いのか、少ないのかすらわからない。


ドリーム小説という呼称、ジャンルとして成立するようになったのはいつ頃なのかもまったくわからない。ジャンル分けとしては同人サイトではない、んだろうか。普通の二次創作サイトのリンクやブクマを眺めていても、そこにドリーム小説サイトがまぎれていることはあまりない。完全に住み分けしているような印象を受ける。
たまに混入しているな、という時は管理人の友人のサイトだったり、管理人が年若かったりするようなイメージがある。そう、ドリーム小説を好む年齢層というのもわからない。なんとなく若い(十代〜二十代前半)ような印象を受けるのだが合っているだろうか。

ドリーム小説の先駆は、たぶん芸能ジャンルではないかと思う。海外でも、自分とスターのラブラブねっとりドリーム小説というのはいくらでもあるらしい(と海外実在人物を妄想の糧にしている友人に聞いた)これはたぶん、自分の名前やハンドルをそのまま小説に入れちゃっている。
日本にもたぶんあるのだろう。しかし、どの程度一般的なのかはわからない。
随分前だがたまたま某アイドルのことを調べているうちにたどり着いたサイトが、自分と某アイドルのラブラブ学園小説サイトだったことがある。そこではドリーム小説という呼称は使われていなかった気がするが、あまり良く覚えていない。驚いたのは、作品のあまりの稚拙さ。書いている人はまったくの一般人で、同人属性これっぽっちもない人だったが、遅刻遅刻と言いながらヒロイン(自分)が家を飛び出し、某アイドルであるところの彼と道でぶつかり、そして彼は転校生でバスケ部だったりするのだ。読みながらイヤな汗が滲んだ(実は二十行くらいしか辛くて読めなかった)。おいおい本気ですか。作者は多分十代だった。
もっとも、芸能系二次創作は集まりによっては表に出て来れず地下に潜伏しているから、表に出てくるのはそういう無邪気な一般人が作ったサイトなのかもしれない。芸能ジャンルにはどの程度ドリームがあるのか、これもよくわからない。


私が現在活動しているジャンルはあまり大きくなく、作品全体のウェブリングでサイト数がせいぜい百そこそこで、母体数があまり多くないせいかもしれないが、ドリーム小説はほとんど見かけたことがない。
1サイトだけ見たことがあるのだが、ちらりと中身をのぞくと、作品のメインキャラであるところの「美形で、クールで、あまり他人に興味を持たない孤高の少年」が「自分にだけは打ち解けてくれる」という内容だった。同ジャンルの友人と「ありえねえ!」と叫んだ。だけど、それはドリームなので他人にどう言われようとそういうものなのかもしれない。むしろ、そんな風に文句言う方が無粋なのだろう。男同士二次創作だってどっこいどっこいの妄想ファンタジーなのだから。


もうちょっと旬のネタで言うと、デスノートのLのドリームというのも見かけたことがある。
L相手のドリームというのがまったく想像もつかなかったので、怖いもの見たさでついいくつか流し読みしてみた。前述の某アイドルほどイヤな汗は滲まなかったが、異様に波立ちのない世界観でもって運ばれる他愛のない恋愛話に、肩すかしを食った気がした。
Lは非常に人気の高いキャラクターだと思う。私も大好きである。身内の間ではL萌えネットワークが猛威を振るっていて、その勢いに恐怖をおぼえるほどだ。しかし、L系二次創作サイトはレベルが高くて見ていて楽しい。各サイトの週ごとの感想などを読むと、小畑絵+つぐみ原作から生まれたLの魅力を再確認する思いだ。
だが、そのLドリームのサイトでは、私や友人たちが思うところの「Lの魅力」はほとんど見いだせなかった。


いくつか読んだ限りでの、そのドリーム小説サイトでのLというキャラクターは
「世界レベルの仕事をしているとにかくすごく頭のいい人で、ホテルずまいで、執事みたいなのが居て、言葉づかいが丁寧で、甘いものが好きで、時折ちょっとすねてみせたりする子供っぽいところもある」
という感じ。
このキャラクターからLを導き出すのはちょっと困難だ。Lのあの動物的な動きとか、本気何だかわからない言動、奇妙なポーズ、それすらも計算と思わせる底知れぬ不気味さとか、そういった魅力はまるで感じられない。
(付け加えると、私が読んだいくつかの話にはキラは影も形も出て来なかった。会話の中にさえ。そりゃあ一般人である「自分」にそうそうそんな話するわけにはいかんだろうけどなあ…)
「よくわかんないけどステイタスの高い、あまり人に打ち解けない彼が私にだけは心を開いてくれるのよ!私は特別!」
というのがポイントのようだった。
で、「どうしてLはあなたに魅力を感じているのか」「どのようなきっかけでもって打ち解けるようになったのか」はまったく書かれていない。なんだよ!それじゃ意味ないじゃんよ!
しかし、そのサイトの管理人さんにとっては、そういうLと恋愛をすることが楽しいのだろう。他人が口出しする類いのことではない。でも、私ならもっとLっぽいLと奇妙な恋愛のようなことがしてみたいかもしれない。そんなドリームないかなあ。


「自分」であるところの女性は名無しで、まったく無個性だ。確かにそれはそうでないと困るのかもしれない。「自分」に大きな特徴や個性があったら、誰もがそのキャラを自分になぞらえて読むことができない。ドリーム小説じゃなくなってしまう。こう考えると、ドリーム小説ってすごく独特な技術がいるのかもと思えてくる。


私はドリーム小説サイトというものを真面目に数をこなして読んだことがないので、もしかしたら中には凄く面白くて、感動して、泣いて笑ってケンカして、みたいなドリーム小説もあるのかもしれない。しかし、女性側に大きな個性を与えられない以上、物語としての限界があるような気もする。
それとも私の前提自体が間違っていて、「素晴らしいドリーム小説」とは「誰もが感情移入できるよう、うまくできていて破綻がない」ものなのかもしれない。
だって、片一方は誰にでも感情移入できるよう無個性(きっと外見描写も制限されるだろうし)で、かつ心を躍らせるような作品。それすごい難しいよ!やれって言われてもそうそう出来ないよ!
にわかに、ドリーム小説を書いている人ってすごい人なんだろうか、と思えてきた。


と、ここまで書いて、試みにはてなキーワードドリーム小説」のある日記を二つ三つ閲覧してみた。
長編連載、感動の渦!みたいなドリームもあるのか!(そりゃあるだろうな)
ううん、一度、「ドリーム小説の世界ではトップクラス、どのサイトからもリンクをはられてる」ようなドリーム代表みたいなサイトを見てみたいなあ。
あと、「ドリーム界では異端児だがマニアにはたまらない」とかそんなサイトも見てみたい。
しかし、それを自分で探す気にもなれないほど、まったくその内容に興味を持てない。それがドリーム小説
たまたまわたしが見たサイトの傾向が偏っていたのかもしれないが。うわーこれすげえ!感動!なんていうドリーム小説は見たことがないので是非見てみたい。
そして、そういう作品は、いま現在ドリーム小説ってなんか不思議…と思っている私にも同じように感動なのか知りたい。
今まで見たことのあるサイトは「うわ何これ」(前述の某アイドルのとか)か「うーん、私には理解できない…」なものしかないので、きっと中には玉のようなサイトもあるはずだと思うのだが探す手だてがない。
友人が最近教えてくれた某ドリームサイトは、海賊ものが原作なのだが(ワンピではない)、相手の男は当然、海賊の男。で、自分はなんと女海賊。
しかも、一人称が「あたい」

教えてもらったはいいが、たぶん画面スクロールすること出来なそうなんで見れんかった。
前述のLドリームのサイトも、L萌えの友達にわざわざURL教えたのに見てさえもらえなかったわ…くやしい…


ドリーム小説サイトを運営している方、ドリーム小説を愛好なさっている方ごめんなさい。
でも、外から見ると、ドリーム小説に対するイメージってこんな感じなんですという風に受け取っていただければ。
まったく交流がないので、本当に未知の世界です。押し掛けて行って、掲示板で「なんで好きなんですか?」とか聞いたら荒らしだしなあ。


同人かそうでないかという疑問だが、某友人には
「かなり昔の話(ネットが普及する前)だが、『ルパン三世』の次元大介と「自分」のドリーム同人誌(小説)を読んだことがある。ヒロインの名前の部分は空白になっており、『お好みで、あなたの名前を書き込める』ようになっていた」

…読んでみたい気すらする。
次元かあ…最初聞いた時はクスって笑ってしまったんだけど、今冷静に考えると気持ちがわからないでもないかも。次元なら!