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下に、「商業と同人の垣根」を追加しました。


あ!思い出した!週マ、ペルシャやってたよねペルシャ
青沼貴子の「ペルシャが好き!」が好きでさ〜あのいわゆる魔法の妖精の原作ってことになってるんだけど実際は似ても似つかない作品なんですよ。だからアニメ化した時は心底がっかりしたよ。私は唇がつんとしててちょっとエロティックでかわいい元祖ペルシャが好きだったんだよ〜魔法少女ものは基本的に好きだったんだけど、あれだけは納得いかなくて見れなかったな…

怒られる腐女子、怒られない腐女子


ドリの話題は一筋縄では行かなそうなので、とりあえず置いておきます。
先日「二枚のレンズを持つ者」http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040802#p5で、腐女子の世代間の温度差について「ボーイズラブの棚が書店にある状況とない状況」ということを書いたんですが、今日はもう少し突っ込んで書いてみようと思います。

友人(私より十才年上の女性オタ/腐女子というよりは普通のオタ寄り)とこのブログの内容の話をしていた時、こんな話題が出ました。

私が大学生の頃の話なので、
記憶が曖昧だし捏造されてるかもしれないんだけど、
あったことは事実です。


C翼のやおい同人誌が流行りだした頃、
WJの編集後記(編集者が書くやつ)に、
「C翼のブームはものすごい。そして中身もものすごい。
小次郎や若島津(←うろ覚え)は怒ってます(泣いてます、だったかな)。
俺たちは変態じゃない」
というコメントが載ったのです。


当時は私はそっちにはハマってなくて、漫研の先輩が描いてるのを見て
「す、すげー…これって一体…」と思っていただけだったので、
同人界の反応はチェックしてませんでしたが(惜しかった)、
先輩がかなりのショックを受けていたのは覚えてます。
(でもずっと続けてた。健小次の、もろにやおいでした)

彼女もだいぶ昔のことなので記憶が曖昧な点もあるようですが、あったことは事実のようです。私もそんなような話を耳にしたことが、あるようなないような?いつ頃なのかは不明ですが、ジャンプを買っていなかった小学校高学年頃の私は直接その事件にふれてはいません。


ボーイズラブという言葉は比較的最近のもので、人によってその言葉の定義も異なるでしょうから、ここではあえて「やおい」と言います。(「ボーイズラブ」はオリジナル作品と二次創作両方、「それっぽい」ものを指すような気がしますが、「やおい」は私のイメージでは二次創作に限定されます)


友人が言うには「今ではこんなこと考えられないでしょう」
…確かにその通りです。キャプテン翼やおい同人、それをする腐女子たちは、編集部という公的な立場から、誌面でもって糾弾される立場だったのです。編集後記という、誰の目にもふれる場所で怒り(もしくは悲しみ?)を表明されるくらいです。
でも今、『テニスの王子様』で同じようなことがあり得るか?否です。絶対にあり得ない。


テニスの王子様』と『キャプテン翼』には
・ジャンプ連載の人気長期連載スポーツ漫画
・魅力的な男性キャラクターが多数登場する
などの共通点があります。

私は『テニスの王子様』原作を読んでおらず、知り合いにテニプリ同人もまったくいないので詳しいことは書けないのですが、そんな興味のない私にでも、テニプリの「どう考えたって腐女子向け、とまでは言わないまでも女性読者向けとしか思えない」商品展開(キャラ別CDなど)や、声優イベントやミュージカル…などについては耳に入ってきます。
声優イベントについてはあんまり良く知らないんですが何か頻繁にやっているようなイメージが。でも、小中高生男子のテニプリ好きでテニスをはじめたような男の子が、そういうものにあんまり来るとも思えないですよね?ミュージカルの客層もわかりませんが、やっぱり、うーん、一般男子は来ないよね?と思ってしまうのですがどうでしょう。知らずに書いているので失礼な描写があったら申し訳ありません。間違いや思い込みなどありましたらお詫びして訂正致します。


一応、いっときテニプリジャンルに足を突っ込んでいた友人にメールで尋ねてみたのですが
彼女も彼女の友人もアニメ方面に手を出していないらしく、あまりよくわからないとのこと。
「ジャンプ編集部がってよりもアニメやそれに付属する玩具やCDのほうが腐女子向けにえらいことになってるような気がする…」
と言われました。なるほど。CDはよく考えればそうですね、アニメの方から出ているんですもんね。
でもまあ、その内容が意に添わなければ原作者や編集部から待ったがかかるでしょうから、これはやっぱり「テニプリの萌えに関しては、編集部サイドが別に構わないと思っている」ことは間違いないと思います。

テニスの王子様』は同人的に非常に盛り上がっていて、テニプリを良く知らない私でさえ、「ウェブリングのサイト登録数がもの凄い数らしい(多すぎて全部回ることは不可能)」「オンリーは何度も入れ替えをしても参加者がはけないので、五時までイベントが続いた」なんていう噂を耳にしたことがあります。このジャンルからはじめて同人誌の世界に足を踏み入れたという方も、きっと多いのだと思います。
そんなテニプリ時代の腐女子と、翼時代の腐女子の違いを、ジャンプの状況から見て行きたいと思います。


キャプテン翼』の連載開始は1981年。当時のジャンプの人気作品には『Dr.スランプ』『キン肉マン』などがあります。『キャッツアイ』もこの年から始まりました。
『翼』は1983年にはアニメ化され、一気に人気を博します。(私もアニメの一回目をたまたま見たのが出会いでした…)
84年には『ドラゴンボール』が連載開始。こちらもすぐにアニメ化され、今さら説明するまでもない化け物的な人気作になっていきます。
当時ジャンプはノリに乗っていたでしょう。『Dr.スランプ』『キン肉マン』『キャプテン翼』『ドラゴンボール』いずれも、同人腐女子の力がなくても大ヒットしています。それだけの力量のある作品ばかりです。
なのに、『キャプテン翼』にいきなり、妙な女性ファンが付き始めます。(キャプ翼以前にもそういう人たちは少なからずいましたが、人数が増えて表に出て来たのがこの辺からなんでしょう)一般人から見たらまるで理解のできない、男同士の恋愛まがいのネタを漫画や小説にして、即売会で販売までしている。そりゃあ驚きますよね。私だって驚くと思う(笑)。というか、驚きましたよ。小学校高学年の、藤子不二雄が好きだった女子には衝撃でした。
前述の編集部からの「怒っています」発言は、これらのやおい同人が、ジャンプの人気作『キャプテン翼』のイメージダウンになると思っての発言でしょう。やおい同人は、原作にとって害あって益は無いと。この頃のジャンプサイドには、「腐女子をターゲットにする」なんて思考はまったくないのだと思われます。
作品のイメージダウンになるから「ポケモンのエロ同人誌を出した人物を逮捕」という事件は、まだ記憶に新しいです。(1999年)
関連:ポケモン同人誌事件 http://www.nitiyo.com/zine/poke/


で、テニプリのことを尋ねた友人からのメールには、こういう記述もあって

なんでも、ジャンプ氷河期(ドラゴンボールとスラダンの連載終了後)に
売り上げNO1の座をマガジンに抜かれたことがあって
かなり集英社側も必死だったみたいで…
腐女子でもなんでもいいから、とにかく購買層を増やせ!!
って時期があったみたいで…
だから、集英社は同人アンソロジーに寛容だって噂も聞いた…(これも噂)

アンソロの噂はともかく、売り上げが落ちたから…というのは聞き捨てなりません。調べてみました。


1995年、ジャンプは出版史上最高の653万部を記録していますが、そのわずか3年後にはマガジンに追い抜かれるという事態になっています。
抜かれたジャンプ側は、1994年に『幽遊白書』、1995年に『ドラゴンボール』、1996年に『スラムダンク』の連載が終了しています。


1996年のジャンプ連載陣、スラダンを除いたラインナップを見てみると…
えー
こここここ、こんなメンツで「週刊少年ジャンプ」はってたのか…と驚くような顔ぶれ。
(各作品をけなす意味では決してありません。看板漫画がないということで…)
実際見ていただくのが一番だと思いますので、こちらをご覧下さい
http://www.h6.dion.ne.jp/~rakuchan/j-data/action/action96.html
アニメ化したものもいくつかありますが、どれもほどほどヒット。とてもじゃありませんが、一般的にも大ヒットと言えるものはありません。
そりゃー部数も落ちますよ。(当時私は多分レベルEだけ立ち読みしてたなあ。ジョジョは単行本派だし)
さてマガジンの方はというと、『金田一少年の事件簿』(また復活するらしいですね)『GTO』などを擁して、97年には
24年間少年誌トップを維持してきたジャンプの発行部数を、初めて抜き去っています。いわゆる「ジャンプ神話の崩壊」という奴ですね。
現在では、両方とも300万部台でわずかにジャンプリード、といった感じ。


腐女子の間では有名な話で(噂なんだか公式発言なんだか良く知らないんですが)
「『スラムダンク』の井上雄彦と、『銀河英雄伝説』の田中芳樹やおい同人が嫌い」というのがあるんですが、私はスラダンは同人萌えしていなかったので、その話を聞いてもふーん、としか思えなかったのです。(自分も腐女子のくせに!)
でも、『銀英伝』は中学生の頃ハマってまして…たいしたことないんですけど、やはり腐女子妄想もしたりなんかしていましたので、公式であるにしろないにしろ、やはり作者自身にそう言われてしまうとかなり!かなり落ち込みますよ!わかってるんだけど…不快に思うの、当たり前なんだけど!ごめんなさい!でもやめられないよう!みたいな葛藤がね、ありましたね。なつかしいなあ。いや、思い出にしている場合ではないです。
田中芳樹さんは非常にファンサービスのいい方で、中学生で銀英伝と田中作品にハマり切っていた私は、バレンタイン、二人のキャラ宛(出版社が違うので別々に)にチョコレートを送ったことがあるのです。すっぱい思い出だよもう。
うちは貧乏でしたし、おこづかいもたかが知れてますから、板チョコに気ィ持ったようなものを送っただけなんですよ。ほんと安いやつ。
なのにホワイトデー。豪華なチョコクッキーセット(PS2くらいの大きさの箱)が二箱!別々に!お返しに送られてきて、もの凄くびっくりした覚えがあります。創竜伝だったかな?のサイン入り(印刷)ポストカードがついてた記憶が。おいしかったよ…
田中さんは、チョコ送ってきた人全員にそうやってお返ししているのだと後になってから知りました。
だからこそ、腐女子ノリというのが許せなかったのかもしれませんね…ちゃんと原作のファンな人にはたぶん、とてもサービスが良かったのではないかと。でも本の続きは出せよと(おっと)


で、『スラムダンク』の方はと言いますと、作者に嫌われているにも関わらず、腐女子人気もかなりのものを保ったまま、96年に連載を終了しています。
その井上さんが平成十二年に『バガボンド』で受賞した講談社漫画賞を、のちにスラダン同人出身(という言い方は語弊があると思いますが。なんて言えばいいのかな)の女性漫画家二人が、二年連続で受賞しています。(平成十四年度『西洋骨董洋菓子店よしながふみ/平成十五年度『ハチミツとクローバー羽海野チカ)各作品の素晴らしさからいって当然の受賞だとは思うのですが、報を耳にした時はなんだか不思議に誇らしいような、そう言ってしまっていいのか、奇妙な心持ちになったものです。
男性ファンや一般ファンが多い『ハチクロ』の読者は、「スラダン同人出身」とか言うと怒る人もいるらしい、と聞いたのですが、ああそうですかごめんなさい、と慌てて謝ったのちに、え、いまの謝るのか?謝るのってなにかどこか何かに失礼っていうか間違ってないか?と
いったいどこに向かって謝っていいのかわからなくなったりして。


話がだいぶそれました。
さて、そんな井上さんが週刊少年ジャンプ戦線を離脱したのち、
97年に『ワンピース』98年には『H×H』『ヒカルの碁』99年には『NARUTO』『テニスの王子様』が始まっています。
どれも腐女子をキリキリ舞いさせている作品ですが、やはりどう想像しても編集部から「怒ってます!」なんて言われることは、あり得ないですよね。
実際に原作者が同人腐女子に対してどう思っていようと、それを表沙汰にするのは得策ではない、むしろ積極的に女性ファンを取り込んでいった方がいい、という方針は、昔はともかく現在の編集部側、作者側ではかなり確立しているのではないかと思います。あくまで私の想像に過ぎませんが。
今ひとつ人気の出ない新連載作品に、かわいい女の子キャラを出したりエロを投入することを「テコ入れ」と言ったりしますが、もしかしたら、女性読者向けの「テコ入れ」なんていうのも普通にされているのかも、とも思えてしまいます。
そういう空気を読者が察知しているからこそ、作品に美形キャラが登場すれば「腐女子狙いだよ」と囁かれたりするのでしょう。否定したくても否定し切れない微妙な状況が、現在の腐女子と原作側の距離感なのではないでしょうか。


編集部から「キャラクターたちは怒ってます!」と糾弾された、かつての腐女子たち。そして、糾弾されても結局それをやめることが出来なかった腐女子たちは、当時たくさんいたのだと思います。原作を好きだからこそ、大きな罪悪感を感じたでしょう。自分のやっていることが、原作に対して決して良いことではないとはわかっているのです。
一転して現在、「萌えてください!」と言わんばかりにたくさんのいい男キャラたちを与えられ、優遇されている。ように一見、見えないこともない現在の腐女子たち。
そう扱われれば、それでいい。そう思ってしまうことを責めるのは少し酷なのではないかと思います。

腐女子を取り巻く状況の変化による、原作、作者、編集部などの公式サイドに対する認識の大きな違いが生まれるのは当然でしょう。
公式サイドからの、腐女子をターゲットのひとつとして据えたマーケティング。メディアミックス、商品展開。
同人誌と原作の境界線は、 そういうものに揺らがされてしまった部分もあるのではないでしょうか。


*ジャンプ連載作品に関しては、こちらを参考にさせていただきました
落石総研 http://www.pluto.dti.ne.jp/~rakuchan/index.html

商業と同人の垣根

腐女子世代間温度差話。
今度は、腐女子側つまり同人作家側の動きも、私なりに追ってみたいと思います。
しかし、私は田舎の子供だったので、大学生になるまではなかなか東京に出て行ったりはできず、同人誌の潮流などを知るのも、もっぱら本屋でのオタ関係雑誌などが主でした。
そんな片田舎の、ごく狭い範囲しか見えない、大手の同人誌は通販でしか買えないような一腐女子の思い出話みたいもんだと思って読んでいただければと思います。


キャプテン翼聖闘士星矢サムライトルーパーなど一連の人気作品によって、女性の同人誌人口が膨れ上がります。人気作家もどんどん生まれてきます。
そんな中には、商業誌デビューする同人作家も登場し始めました。
私はそう詳しいわけではないのですが、印象的だったのは高河ゆん
私がこの人の作品と出会ったのはウィングスの『アーシアン』が最初です。初めは同人出身ということを知りませんでした。商業作品はだいたい揃えてるくらいファンなんですが、同人誌は一冊しか持っていません(アニメイトで売ってたやつ)
続いて、小学館でデビューしたおおや和美。最初に買ったキャプテン翼アンソロに描いてらっしゃったのを良く覚えています。
それとやはり、特筆すべきは尾崎南でしょう。代表作『絶愛』は、あんまり言うのもあれなんですが、どう見てもあの、キャプテン翼の某キャラと某キャラがモデルなわけです。あまりのまんまさ加減に、同人女なら誰もが言葉を失うほどです。
知らない方のために話を説明しますと、ええと…人気ロック歌手の南条くんが、サッカー命の少年拓人くんに一目惚れしてしまい、やがて愛し合うようになるという…あってる?あってる?
連載していたのがオタ向け漫画雑誌なら、まあそれほどには驚きません。この人の凄いところは、id:XQO:20040805#1091682383で指摘されているように、『翼』と同じ集英社週刊マーガレットという、少女誌の大メジャーで長きに渡って連載を続け、しかも熱い支持を受けていたというところです。


私は小学校六年くらいの頃、りぼんからシフトして週マ(マガジンではない)を買っていた時期があったのですが、当時のマーガレットは看板が確か亜月裕の『伊賀野カバ丸』で、それはまあ少女漫画としては異色ですが、その他の連載作品はごくまっとうな恋愛ものが多かったように記憶してます。『ポップコーンをほおばって』とか…星野めみとかもいたような…ひたか良とかいたような…りぼんの浦川まさるの妹の浦川佳弥とかデビューして…って正直あんまりよく覚えてません。すいません。
しかし、その五六年後に、尾崎南が看板作家になろうとは。誰も想像しなかったんじゃないかと思います。
尾崎さんが連載していた頃週マを買ったことはなかったので、本当に看板作家だったかどうかは知らないんですが、同時期にこれも超人気作「花より男子」も連載していたと思うので二枚看板だったかも。書店ではしょっちゅう『絶愛』が表紙を飾っていました。巻頭カラー当たり前だったくらいの扱いだったと記憶してます。付録なんかも付いてた覚えあるなあ。レターパッドとか…

相川七瀬が絶愛大好きなのは有名な話ですが、まったくの一般人でも、初めて『絶愛』を読んで、もの凄く感動して泣いたとか、そういう人は枚挙に暇がありません。
私が高校生の時、同級生で、背がスラっと高くて飾らないショートカットで、バレーボールなんかやらせるとカッコよくスパイクを打ったりなんかしちゃう、さわやかな女の子(委員長でした)が『絶愛』が大好きでした。
もちろん、彼女は同人なんてこれっぽっちも知りません。キャプテン翼と『絶愛』を結びつけて考えたことなども一度もないであろう彼女は南条晃司(絶愛の攻めの方って、端的すぎる表現ですか)の大ファンで、オタだった私が「南条描いて!」と頼まれ、模写してあげた時の彼女の嬉しそうな顔。描かれた紙を抱きしめんばかりに喜んでいたことを、今でも忘れられません。うーん、いい思い出なんだかそうじゃないんだかわからない。すっぱい。

いったいどういう経緯でもって尾崎さんがあのような連載を週マで始めることになったのか、それが容認されたのかまったくわからないのですが、内部の事情はともかくとして、『絶愛』は大メジャーな人気作品となりました。
作品の内容とか評価とかはともかく(個人的には好きです)、何より
「そういうのもアリなんだ…!!!!」という思考を、世の腐女子たちに植え付けた功績というか…功罪というか…なんだかわからないんですが、それは大きいのではないかと思います。
同人作家出身で商業誌デビューし、作品に「あーこれ、あれとあれがモデルでしょー」ってわかってしまうような描き手さんも多かったですが(今でも多いですが)、尾崎さんの場合は「あそこまでやられたら、もう何も言えない」レベルの凄さだと思います。
その衝撃レベルたるや、男性オタで言ったら、赤松健さんのネギま!を初めて認識した時の衝撃みたいな感じです。ただし、赤松さんはもちろん狙ってやっている頭脳プレイで、読者が「好きだろう」「萌えだろう」と思うものを周到に配置し、投下しているわけなのですが、尾崎さんの場合は自分の好みをそのまんま、読者がええっと言う暇もないほどに直球でぶち込んで来たわけで。「狙っているとかいう次元を通り越している」ところが凄いところです(すごく誉めてるんです)。いやむしろ「狙ってない」ところが凄いのかな…「狙うという考えがない」と言うか。


で、これわたしあんまり良く知らないんですけど、知人に「彼烈火」(尾崎南のサークル名)をイメージアルバム?だかを昔、聞かせてもらった覚えがあるようなないような。で、それの中で台詞というかモノローグ部分を喋っているのが、当該の『翼』のアニメのキャラクターを演じていた声優さんだったような覚えが、うっすらとあるんですがこの記憶、正しいでしょうか?そんなことしちゃっていいのかい!?と随分驚いたような覚えが。のちに集英社から出されている公式のCDとかのは声優さんが違うっぽいんですよね。
それと、これも超有名サークルさんですが「えみくり」(サークル名)が味っ子の同人誌を出していた頃、これも友人から借りて聞いたテープだったんですが、メインの二人の声優さんを連れて来てトークショーとか、同人誌の台詞をそのまま喋ってもらったりとかしてて、そそそそそそんなことが出来るのか!?ともの凄く驚いた覚えがあります高校生の時。中身はかなり面白かったんですが。
まあこういうことはごくごく内輪でのみ行われていたことで、それで外部のファンにどうこうってことはないとは思うんですが、やっぱり、商業と同人の垣根って随分低くなっているんだなあ、というようなことを当時のわたしはうっすら感じたように覚えています。
そういえば「紫宸殿」(サークル名)が出してたグランゾート本(やおい)も、元アニメの方から公認されるような形でビブロスから発行されちゃってるしなあ。しかもまだ続いているらしい。同人誌バージョンの方は友人から借りて読んで泣いたっけよ…泣けるんだこれが。この同人誌、装丁がハードカバーで、すんごいキレイだったのをよく覚えています。


その後も同人出身作家さんは増え続けました。CLAMPがメジャーどころでは代表的かと思います。あんまり良く知らないのでネタがありませんでコメントできないんですが、本当はこちらさんたちも、同人としても商業作家としてもいろいろ新しいことをやった方々なんだろうなと思います。
メジャーでなくても、実は同人もやってます、昔やってました、という商業漫画家さんはとても増えました。
以前は「同人作家」「商業作家」の垣根は明確に分かれていましたが、「もと同人作家」でメジャーな商業誌でヒットを飛ばす人や、商業で活躍した人が、自分の好きなものを描くために同人誌を出してみたり、同人誌オンリーに移行したりなどの、「商業〜同人」間の行ったり来たりが読者の目に頻繁に映るようになってきます。人によっては「同人作家」なのか「商業作家」なのか、明確でない人もいます。


普通に考えれば商業作家はプロであり、それでメシを食っているわけです。同人作家というのは趣味です。金儲けのためではない、というのが建前です。少部数でも、自分の描きたいことを描く。それが同人。
だから「商業作家」が息抜きに、趣味で同人誌を出してもまったく構わないわけですが、以前では考えられなかったような不思議な現象が、ある時期に限って、商業誌で少なからず見られるようになってきました。


いつも楽しみにしている某先生の連載。今月は巻頭カラーです。ぱらぱらとページをめくっていくと、突然誌面がまっしろに。あれ?

そうです、某先生は、夏コミに発行する同人誌の原稿に時間をかけすぎて、商業誌の原稿を完成させることができなかったのでした!
というわけで、今月号は途中から鉛筆描きの下書きのみの掲載です…って
ふざけるな!と読者が叫んだところで、誰が止めることが出来るでしょうか。


完成させられないまま掲載されたり、掲載されなかったり、このモラルのない現象は、今でも日本のどこかで、ある時期になるとぽつりぽつりと起こります。人気作家がやると殊の外目立ちます。いつもなのであきらめられてしまった作家もいます。人気があるので、編集部も何も言えません。ついには読者まで慣れてしまうようになった人もいます。
ですが、これを見て、同人誌に対してプラスの感情をはたらかせることは、極めて難しいのではないでしょうか。編集者や商業作家は同人を下に見る、とか言うけれど、そりゃ下に見たくもなるでしょう。全ての人がそうでないにしても、よく目につく人気作家がそれやってたら目立つに決まってる。「だから同人は」って言われるに決まってます。
若い人から見れば「人気さえあれば、こういうことしちゃってもいいんだ」と映るかもしれません。「同人のためなら、商業誌ほっぽってもいいんだー、許されるんだ、カッコいい」と思う人も、中にはいるかもしれない。
急病で…などと取り繕っても、いずれどこからかわかってしまいます。 一社会人としてみれば、自分の趣味のために本業を怠ったことを、全国の読者に万人単位でさらしているわけです。みっともないことこの上ないです。好きな作家にこれをやられると、本気でヘコみます。作品でどんなに立派なこと言っても、実際やってることこれじゃあなあ…とか思ってしまいます。同人は同人だろー、商業の仕事を押しやってまでするのって、プロとしてどうなの?出来ないんなら出来ないって、プロの仕事減らすとかすればいいのに…同人の人って、そんな人ばっかりなんだろうか…「急病で」と商業誌を休んで出来た同人誌が仮にすごく良くっても、なんとなく心は晴れません。
そんな人ばっかりじゃなくても、そういう人が人気作家だと大変目立つので、そう見えてしまうこともあると思うのです。
編集や出版社側から見れば、同人誌だから締め切りを破ってもいいという感覚をプロの仕事にまで持ち込んでいる、同人はいい加減、そう思うでしょう。一読者である私でさえ、そう思わざるを得ません。
オタじゃないけどその作家を好きな人が聞いたら「同人ってなんかヤだ」と思うでしょうし。商業誌に同人の事情を持ち込むなんてプロじゃない、と一般的な常識人は思うと思います。
「でも出したいんだもん!一年に一度の夏コミだもん!」というのは、子供の言い訳です。


昔は「商業作家」「同人作家」の差は明確だったと思います。
ですが、商業から同人に行く人、同人から商業に行く人、商業誌に同人の事情を持ち込む人…
そういった人たちが増えて、そういう人たちを見詰めて育った、私たちよりも後の世代に出て来た腐女子の二次創作に対する認識に、大きな影響を与えているのではないかと思います。
そして、商業と同人のボーダーレス化によって、昔から腐女子だった人たちにも、新しく腐女子になった人たちにも、少なからず意識の変動が起こっているのではないでしょうか。