尾崎南は賭けに勝ったのか?(尾崎南について1)


尾崎南について、もうちょっといろいろと考えてみたいと思います。
これより前に書いたものはこちら
http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040805#p3
http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040913#p1

先だってちらっと書いたりもしたのですが、あの後、尾崎ファンのタメ年の友人(Tさんと呼びます)に、尾崎のC翼同人誌をもう四冊借りて読みました。


「激烈」(89年8/13発行?奥付が二色刷りで、日にちの文字が別の色のインクに重なっててよく見えません…)
「稲妻」(89年12/23発行)
「烈火」(90年12/23発行)
「渇望」(91年8/16発行)


以上四冊、続き物です。どれも百〜二百ページ級の分厚い本です。三年かけて描かれています。
貸してくれたTさん(リアルタイムでこれらの同人誌を購入していたが、現在の作品は追いかけてはいない)によれば、この話は中断したまま、続きは描かれていないはずだとか(続きが出ているか出ていないか、ご存知の方がいらっしゃったら教えていただけると助かります)。

貸してもらった次の日、一気に四冊続けて読んだのですが、「ああ、こりゃ確かに中断するしかないっちゅう話だよな…」と感じました。決して,内容をけなしているわけではありません。
尾崎本人はこの話にどのような結末を考えていたのでしょうか。それとも、考えていなかったのでしょうか。


一冊目の「激烈」のトーク部分に書かれている商業誌での仕事の予定に、新連載「絶愛−1989−」と記載されています。こんなに力のこもった内容の同人誌(ページ数は180枚)を出している際に、更に商業誌でも「絶愛−1989−」を始めようとしていたのだから恐れ入ります。いったい編集部との間にどのような経緯があったのか、尾崎自身が描きたいと望んだのか、編集部が描きたいことを描かせようとしたのかはわかりません。
以下引用。*〜の部分は私がつけた注です。トーク部分は全て尾崎の手書き字なので、ニュアンスの再現が難しいですね…汗マークの部分は(*汗)と表記してます。
手書き字で読むのとフォントで読むのだと、かなり印象が違うのではないかと思いますが。

8月5日発売 Margaret 17号
新連載P40「絶愛ー1989ー」
5日・20日発売の本誌。
6回連載ですが人気(筆者注*ルビで「アンケート」とふってあります)しだいで長くもなるそうです。ただPTAが何か言ってきたら…(*汗マーク)


(「激烈」185P 「お仕事の予定です。」より)

今さらながら、まったく知らない人のために少し解説を。
「絶愛−1989−」は、週刊マーガレットにて、約二年にわたって掲載されました。南條晃司(超人気歌手)と泉拓人(才能あるサッカー選手)二人の激しい愛の形が描かれています。
作者は「キャプテン翼」を題材にした女性向け二次創作同人誌の世界で人気作家だった尾崎南
「絶愛」に登場するメインの登場人物二人が、尾崎が同人誌で描いていた「キャプテン翼」のキャラクター、若島津と日向の組み合わせにソックリであったため、連載開始当時、オタ業界は騒然となりました(多分)。


上で引用した部分で尾崎は「6回連載」と語っていますが、「絶愛」の単行本を見てみると、実際の六回目は二巻の序盤、有名人の晃司が拓人にまとわりついていたことで、拓人の父母の関わった過去の事件が表沙汰になり、妹や弟がいじめられる様を拓人が目の当たりにし、「自分はこいつらを守ってやることも出来ないのか!」と苦しむあたりの話になります。話はもちろん、まったく終わっていません。早い段階からアンケートでの人気が高く、連載長期化へのゴーサインが出たのではないかと思われます。

また、プレ「絶愛」と言える読み切りが「絶愛−1989−」連載前に二度掲載されています。「絶愛」五巻に収録されている「3DAYS」(「絶愛」連載開始と同じ年のマーガレット6号に掲載)には、主人公の女の子が憧れるミュージシャンとして南條晃司が登場します。彼女に惚れている男として、渋谷克己(C翼における反町一樹)くんも登場しています。一巻に収録されている「Ballad」(同じく10号掲載)では彼が主役で、彼と南條晃司との出会いが描かれます。二作に登場する南條が読者に好評だったのかもしれません。彼を主役にして連載、という話に発展してもおかしくはないでしょう。
この二作に泉拓人らしき人物はまるっきり登場しません。「3DAYS」の方で、南條晃司がステージ上でファンに向かって「オレには ここにいるあんたらを皆殺しにしてもいーほど 大切な人がいる」と語りかけます。存在はしているようですが、どういう人物だかは明らかにされません。「Ballad」の方は中学3年時の話で、晃司はまだ拓人に出会っていないので、当然出てきません。
尾崎の同人誌の読者には明らかに「南條は若島津で渋谷は反町」でしょうが、好きな相手が男という要素がなく、日向(=拓人)が出て来ないので、カップリング色はほとんどありません。そして、サッカーという要素もまったくありません。ですから、同人出身作家によく見られるお遊びの範疇だということで、二作の読み切り段階ではそれほどの批判もなかったのではないかと思います。


「絶愛−1989−」が連載されていた期間と、同人誌「激烈」〜「渇望」が発行された時期はほぼ重なっているといえます。当時週マは隔週発行、一回の掲載ページ数は30ページ前後。人気作品だったため本文カラーや表紙カラーも多く、決して楽な仕事ではなかったはずです。「仕事の あいま あいまを ぬいまくって」(尾崎のトークより)、これらの分厚い同人誌は強い意志のもと、生み出されました。


尾崎は「絶愛−1989−」連載のネームが通った時点で、その連載の内容が自分の二次創作の同人誌の内容と非常に似通っていることに、少なからず批判が寄せられるであろうことは、当然予想していたと思います。
新連載の仕事の情報の横で、彼女はこう書いています。

(略)
「仕事をしてるからこそ、同人ができる」ってゆう考えはまちがってはいなかったと思います。ただ、商業も同人も私にとって“仕事”と“シュミ”なんていう線はないし、仕事は仕事シュミはシュミ、なんていう立派なお言葉はどうぞ他の方に期待して下さい。え?最初から期待なんかしちゃいねーよって?どうもすいません(*汗マーク)
私にとって、これが全てだし、これしかないんだから。私は人の見本になるような立派な女じゃないし。考え方も人間性にしても、こんな状態になってもまだ自分のしていることが正しいか誤ってるかわからない。21にもなってね(*汗)ほんとに(*汗)
でも、私にはこれしかできないんだもの。大切なもの、守るためには、私はなんでも捨てられると思う。イコール他の事や、人や、もののことはなんも考えないってゆー人間的にサイテーの位置にいるのが私です。 これは謙遜とか卑下とかじゃなくて(よく言われるんだよね。ほんとのことかいてるのに)尾崎っていうのは本当にそういう奴なんだってことを知って下さい。私は、ただ、おそらく一生に一度であろう大切なものを見つけ、知って、“これだ”と確心(*ママ)した。それだけです。「だからこそ〜なんじゃないか」っていう意見は、多分私はきかないよ。だってそれはその人の意見であって私の考えじゃない。 自分の考えを信じてるわけでは決っして(*上に傍点)ないけど(前文に延べた(*ママ)通り。)今までのように人に左右されて、フラフラと生きるのはもうイヤなんです。すぐに、人の意見に突き刺されて、歩みを止めてしまう。激しく動かされてしまう。そういう臆病を、なんとかしたいと思うことで耳をふさいでしまう、最悪のパターン。 でも結局、最後にはどこも変わっちゃいない弱虫の、心配性の、臆病な私が残る。そんなことわかっちゃいるんですけどね。多分これが私の一生の賭けだから。“あんたの勝手で健と小次をふりまわすな”って?ごもっとも。でもきかないよ。私の健と小次郎は私だけのものなんだから、私自身だから、です。
これ以上書くと変なことますます書きそうなんでとりあえずやめます。もう、こいつアタマ正常じゃねーよっとか思ってるでしょ 思ってるでしょッ 私もそう思うもん(*汗) とにかく今はやるしかない。できるとこまでやって、(駄目でもともとなんだからマジで*汗)玉砕するときはきれいに玉砕します。でもあと一冊は必ず本出すからね。
一応、今はあの連載が終ればそれで私のプロ生活は終わりなわけだから、(あくまでも今は…そう考えている。みんな笑うけどさ…)もしかしたら3ヶ月後とか今年中には決着ついちゃうかもしんないし(こっちの線が濃いと見る私。)今は文字通りに“やるしかない”耳をつぶしてでも(*汗)(なにもきかないように)目をえぐってでも。(なにも見ないように) 恐すぎるから。
         オバケなんかより
         よっぽどだよほんとにさ(*汗)

(「激烈」184〜185P 掲載のトークより)

トーク、どこも切れずにほぼ全引用してしまいました。
ここで遠回しに表現している“あんたの勝手で健と小次をふりまわすな”と他人に言われるような「一生の賭け」とは、間違いなく「絶愛−1989−」の内容についてでしょう。

絶愛は3ヶ月で打ち切られることもなく、巻を重ね、続編も描かれる人気連載となりました。

尾崎は、賭けに勝ったのでしょうか。尾崎の賭けとは、なんだったのでしょうか。

尾崎については

これはまったくの序で、書きたいことはこの文には一ミリも出て来てない状態なんですが。今はTさんと友人もう一人に話をいろいろ聞いたりして煮詰めている段階です。いやー面白い。面白い。とにかく原作をもう一回読み返さなければ。
面白いんですけど、私は25日には桐青にもってかれてる予定なんで(笑)いや、ほんとね、昨日ね、桐青戦の夢みたもん(笑)なぜか和サンも準サンも利央もどこもいなくって、でもユニフォームが例のモデル校と同じでさ(笑)キャッチャーが和サンと似ても似つかない別人なんだよ。なぜかよつばとのふ−かちゃんとか出て来て…わけがわからないけどemifuwaさんが桐青出て来なかったらさみしくて泣いちゃうってことはよくわかるんです。
そして明けて7日にはバッテリ6にもってかれてる予定なんで、尾崎について書く暇ないんですよねそうすると。もの凄い勢いで二次創作モードになるので、二次創作モードの時はこっちへの文章というのはまったく書けないんですよ(*萌え語りは別)。全然ベクトルが違うんで。どっちかに偏ると戻すのに苦労します。


というわけで、この続きの更新はまったくの不定期になります。次いつ来るかわたしにもわかりません。もし続きアップされてたら、興味のある方は気がむいたら読んでください。そんな感じで。