読んでみないか?『まおゆう』。


最近話題になってますね。『まおゆう』。

『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』


口コミで「これ面白い!」と広がっていき、今まさにブレイク中、書籍化その他の企画も進行中のweb小説です。小説、というにはちょっと特殊な形態ですが、読みにくさは感じません。

私も一ヶ月ほど前に読破しました。とても面白く読ませていただきました。
色々と「こういう話」と説明するよりは、やはり直接読んでもらい、その雰囲気を実感していただきたい…ということで、冒頭の部分をそのまま引用します。

物語は、遂に「魔王」のもとにたどり着いた「勇者」が、「魔王」に誘惑される場面から始まります。
タイトルにもなっているこのやりとりからです。


魔王「この我のものとなれ、勇者よ」
勇者「断る!」



魔王「どーしてもか?」
勇者「アホ云うな。お前のせいでいくつの国が
 滅んだと思ってるんだ」


魔王「南の森林皇国のことか?」
勇者「空は黒く染まり、人々は貧困にしずんでいった」


魔王「考え無しに森林伐採して木炭作りまくって
 公害で自滅したんだろう」


勇者「公害……?」
魔王「あー。えーっと。そうか、まだ判らないか」


勇者「誤魔化すなっ! 聖王国の大臣憑依だって
 魔族の仕業じゃないかっ!」

魔王「欲の皮の突っ張った大臣が政権奪取と
 王族の姫君大集合ハーレムを作ろうとして失敗しただけだ。
 そもそも逮捕された後に魔族の洗脳とか言い出すのは
 人間の悪人の悪い習慣だと思うぞ」


勇者「ごまかすのか……許せん……」
魔王「誤魔化してない」


勇者「南部諸王国と戦争はどうなんだ。俺は戦場で
 何百という人間が魔族の軍勢に倒されているのを
 この目で見てきたんだ」

魔王「それで?」


勇者「は? 人間世界を侵略してきた魔王、貴様を
 許しはしない!」

魔王「どちらが侵略したかという点については見解の相違だ。
 こちらにはこちらの言い分はあるが、まぁ、戦争してるのは
 事実だなー」


勇者「貴様は悪だ」

魔王「じゃぁ、悪でも良いけど。当然私を殺した後には
 南部諸王国の王族も全部抹殺して回るんだろうな?」


勇者「は? 悪はお前だけだ」
魔王「人間が魔族を殺していないとでも?
 魔族は悪で人間が善だって誰が決めたんだ?」


勇者「……っ」

魔王「そこで『俺が法だ!』とか『俺が神だっ!』とか
 『俺がガンダムだっ!』とか云えたら、お前も
 もうちょっと生きるのが楽なのになぁ……」

勇者「うるさいっ!!」


魔王「勇者は好きだから、この話はやめてやる」
勇者「好きとか云うな」


魔王「この資料を見ろ」
勇者「なんだ、これ……羊皮紙じゃないのか?
 薄くて白くてつるつるだ……」
魔王「プリンタ用紙だ。それはどうでもいい。書いてある
 ことが重要なんだ」


勇者「……えっと、需要爆発……雇用? 曲線?
 消費動向……経済依存率?」


魔王「わかったか?」
勇者「なんだこれは。邪神の儀式か?」

魔王「違う。経済的視点から見た巨大消費市場としての
 戦争の効用だ」


勇者「……効用?」
魔王「そうだ」


勇者「戦争に意味なんてあるものかっ。
 貴様ら魔族が人間世界を滅ぼすための侵略だ」


魔王「勇者がどーシテもと云うなら、ちゃんと戦ってやる」
勇者「っ」
魔王「話によっては、討たれてやっても良い」
勇者「その首差し出せ」
魔王「だから、半日ほど話を聞け」
勇者「……」


魔王「これは100年ぶりのチャンスなのだ」


このあと、物語はどんどんとテンポよく先に進み、猛烈な広がりを見せます。
くだくだしく説明するよりも、知らない人は知らない状態で読んで欲しい気もするので、思い立ったら今!読み始めてください。

上の部分はつなげて引用していますので、実際はもう少し小さな固まりが連なった形式で掲載されており、ちょっとずつ読めるようになっています。



引用部分からはわかりにくいですが、「魔王」は実は女性です。私はこの「魔王」が大好きなのです。まおーかわいいよまおー。

実は魔王としての力は弱いけれども、この時代の誰も持たない知識という武器を持つ「魔王」と、魔王と相対するために正義を信じて戦い続け、人間としては強大すぎる武力を持ってしまった「勇者」が、二人でどんな道を選び、広い世界に何をもたらそうとするのか。
その行く末を、今ちょうど盛り上がっているこの時期に、追ってみるのも悪くないんじゃないでしょうか。