「ラブリー☆えんじぇる!!」の出来るまで/MADの色合わせの話

MAD職人仲間にリクエストをいただいたので、あるMADの出来るまでの試行錯誤を、思い出せる感じで書き留めていきたいと思います。
このエントリはおおむねぱるさん向けに書いたものなので、MAD製作に興味のない方はスルーしてください。
*なお、エントリ内の時間表示(0:00)は、実際の秒数でなく、このエントリ内に表示されたTUBEの動画の秒表示に合わせています(この場合、実際の秒表示と逆になる)。



今回の主な題材はこれ。一番新しいやつ。

ラブリー☆えんじぇる!!


MADを作ろうとする時、私はだいたい曲から入ります。この曲好きだー好きだーなんとかしてアカギMADでっち上げられないかな〜でも無理な〜この歌詞だけならなんとかな〜(ものすごく繰り返して聴く)はっ…!ここあの場面、使えるっ…! …ていうのが三カ所くらいあって、なおかつどうしても作りたくなった時に、作ります。
「ラブリー☆えんじぇる!!」の場合は珍しく、初聴きで「これは鷲巣さましかねえっ…!!むしろ鷲巣さまのPVを作るべきっ…!!」と電流走った曲なので、迷いはありませんでした。ていうか本気で、誰か(他のアカギMAD職人)とネタがかぶるんじゃないかと作ってる時は心配で心配でしょうがなかった。


イメージは「ラブリー☆えんじぇる!!/鷲巣巌」なので、本当はPVっぽいテロップも入れようと思った。でもめんどくさかったのでやめた。元歌を歌っている方にも悪いかなとちょと思ったし。
本当は鷲巣さまが歌っているような雰囲気にしたかったけど、笑顔でノリノリな場面は限られてくるし、そういう部分はたいてい他の見せ場になるのであきらめた。
でも、冒頭の「レッツゴーフィバーターイ」の女声のあたりは鷲巣さま、男声は他キャラ、ときっちり分けたつもり。


このMADで最も作りたかった部分は2:11の「きゅんきゅんきゅきゅん、イエイ!」の振り付け部分。振り付けのところに使った場面は、基本逆回しで、振りの切れがいいように多少カットして速度を変えている。この場面を以前から振り付けっぽく使えないかな、と思っていたのだけど、もっと切れのある振りにしてもよかったかなと今更後悔。
また、後半の0:25「イエイ!」の鷲巣さまがキラキラ光る部分が、このMAD唯一の静止画書き出し場面。18枚。アイマスのアピールのつもり。これも前々からやってみたかったけど、うまく出来るかどうか自信がなかった。アイマスのアピール部分が入った動画を同じようにQuickTimeで静止画書き出しして、それを参考に一枚一枚白い光の動きをphotoshop上でブラシで描いていった。黄色いぼわっとした円はグラデーションツールのカスタムで新しいグラデを作成して描いたもの。

画像はADOBE BRIDGE CS3。元ネタのアイマスの方を別窓で開き、一枚ずつ確認していきながら描いた。これぞ3Gメモリの無駄遣い

レイヤーをずらしたり拡大したりなんだりかんだり。所用時間は四時間くらい?iMovie上ではまあまあ見れる感じで出来たんだけど、flvにしてニコにアップしたらここだけ劣化してしまって残念。
アクシデントもやってみたかったな〜


編集について。
3:06付近の「(遥か彼方君に恋の)あ らー しー をー とーどけますー」このメロディになる部分(ここ以外も全部)、脳内絵コンテでは一音一音で細かく画面切り換えする予定だった。でも、実際やってみると、つながりがわかりにくいだけでスピード感が出ない。とにかく細かくリズムで画面をカットしていきたくなるのは悪い癖なので、自重。この手の自重は毎回。
その辺を長いこといじっていたのと、直後の「宝物は逃せるわけないし」のあたりもうまくいかずに長いこといじっていて、非常に辛かった覚えが。ここが出来て楽になった。
2:46「天使がその〜いただいちゃうからね!(イエイ!)」の(イエイ!)までを上手く合わせるのももんのすごい時間がかかっている。切って、スピードかえて、合わせて…の繰り返し。今でも上手く合わせられたとは思っていなくて、もっと上手に出来なかったかと思う。
2:16「まぶしすぎて」のカットは二回同じものを使っているが、実はこのカットのみ鷲巣戦以外から持ってきたもの。
いつもは「鷲巣ものは鷲巣戦以外の部分からは持ってこない」というなんとなくの決まりがあるんだけど、これだけはどうしてもアカギの顔がピカッと光るのをやりたかったので、あえて持ってきた。この場面、鷲巣戦にあったような気がしていたのだが、散々探したがなかった…(いわゆる脳内ソースである)浦部だったっけ?と探したがなく、実はニセアカギとの賭けの場面だった。よく見ると服が違うため、ロングではなくほとんどアップの部分しか切っていない。


「鷲巣ものは鷲巣戦以外の部分からは持ってこない」のは別にポリシーじみたことではなくて、映像に統一感がなくなるのを防ぐため。何でもありのカオス系MADならばあまりキニシナイが(自分ので言うと「神域○×計画」とか「もってけ!」もそうかな)、使うカットが一個の話のくくりだった場合(「市川編」とか「浦部編」「矢木編」「先輩との賭け編」みたいな)、なるべくその中だけでカットを拾う。各エピソードによって、作画が微妙に違うのはもちろんのこと、各々の画面の色彩の雰囲気が微妙に違うからである。


(ここから、質問者のぱるさんに以前聞かれた「色合わせ話」を詳しく説明します)


一番大きいのは、各場面での照明の違い。特に「矢木編」は強い白熱灯のもとで勝負をしているので、オレンジがかっている。「先輩との賭け編」もうっすらと白熱灯で、若干ぼやけた印象。この場面を「市川編」などの他の場面と合成すると、明らかに違和感が残る。

左が矢木戦でのアカギ。右は市川戦でのアカギ。こうして並べるとわかると思うが、色相が違う。左はピンク味がかっていて暖色系、右は寒色系な印象。

照明にこだわるのには理由があって、画面の中で印象を大きく左右する「キャラクターの肌の色」が照明の照りで変わってくるから。アカギの場合シャツが白で髪の毛も白なので、照り具合で色がかなり違ってくる。「神域○×計画」(下においてあります)で例を挙げると、イントロの歌詞なしの部分、おおむね同じ場面のアカギ(拳銃の場面)の顔で統一しているのは、これを(カッコいいからといって)他の場面から持ってきたりすると、肌の色が変わっている場合が多く、統一感がなくなるから。あともちろん、作画の雰囲気でかなり印象が違うので、みだりに混ぜると危険。更に言えば、麻雀卓の緑色もエピソードによって青っぽかったり黄色っぽかったりと差がある。
それ以外でも、背景とのバランスを考えてキャラの服などの色設定も考えられていると思うので、舞台がそれほど変わらない市川戦や浦部戦でも雰囲気は違う。鷲巣戦はかなりあからさまに違うし、黒手袋をはめているかはめていないかでも印象が変わってくる。鷲巣戦は背景の豪華さも相まって、全体的に非日常的な雰囲気。室内のカーペットが赤く、全体に黒と赤でまとめられており、鷲巣のキーカラーも赤(内面描写や神がかった描写になると、赤く燃え上がる)。その中に、白い髪で青い服のアカギが異物のように浮かびあがる色彩設計となっている。
市川戦は全体的にグリーンが多く目に入る。また、アカギのシャツと髪が白な上に市川も白髪で長髪なので、画面の印象が明るく、淡白。なので要所要所で黒っぽい南郷・安岡と川田さんを挟むと、画像をつなげた時にメリハリが出る。


カオス系MADでも、あまりこれらを交差させると統一感がなくなるので、歌詞のひと固まりや、メロディのひと固まりの中では、同じ場面から持ってきた方が見た目にガチャガチャしない。


神域○×計画
ただ、これを作っていた時はたぶんそこまでは考えていなかった。ただなんとなく「このカットだと色が合わない」「なんかガチャガチャしてる」という印象のみでカットをチョイスしていたと思う。「色を合わせよう」という意識はあった。


もってけ!」も良く見てもらうと色を合わせている(一つの歌詞やメロディの固まりの中で場面を混ぜていない)ので見てみてください。

もってけ!和了り牌 full ver.


少年時代のと鷲巣編のとかが前後に来る場合、鷲巣は赤っぽい色彩が多いので、暖色系でまとめると統一感が出る。逆に反対色で合わせるのもコントラストが出来ていい。あえて違う場面のカットを持ってきて印象の切り換えを狙うことも可能。
「神域○×計画」の0:33「この地上で最強の子孫」子孫、の場面の回る四牌は前のアカギの映像とは直接関係ないが、ここでちょっと「しそん」のリズムに合わせて動く感じのものが欲しかったので持ってきた。どんな場面でもよかったが、前のアカギの画像に合わせてオレンジ系の場面をチョイスしている。こんな感じで色合わせすると、カオスでも見た目に統一感が出る。
違う場面でもどうしても合わせたければ、エフェクトをかけるといい。「もってけ!full ver.」の後半、少年・青年・壮年アカギが続けて出てくる場面は、そのまま並べるとあまりに色設定が違い過ぎ、つながっている感じがしないので、「色調整」というエフェクトで少しだけ白黒をかけている。


ただ、上の「色合わせ」の概念はそれでガチガチに縛られちゃうと自由に出来ないので、普段は意識しないでいいと思う。クリップを仮乗せした段階で、「なんか違和感あるぞ?」と思ったら差し替える、くらいでいいのでは。私もそうだし。
色合わせなんかしなくても面白いものは面白いので、「私は感覚的にこうしたいからしている」という程度である。
何も特別な技術というわけではないし、こんな風に説明しなくても、感覚で、やっている人はやっているんじゃないかな。


あと気をつけるのは、キャラクターの顔の方向など。マンガのコマ割りとかと一緒で、同じ方向の顔が続くと変だったりする。だから、使おうと思ったカットが逆向きだった場合は反転をかけたり。
アカギや鷲巣の顔の方向で感情の動きを表現できるので、かなり気を配る。もっとも、アニメの方も製作段階でそういうことは当然意識して作ってあり、顔の向きはほぼ統一されているので、実際はあまりいじる部分はなかったり。
アップが続くともちろんうるさいし、メリハリがなくなるので、ロングや、マンガで言うところの「捨てゴマ」(人物の入らない、背景や小物のアップなどを挟んで全体のバランスを取るためのコマ)を適度に挟む。鷲巣の場合、手の表現(手のみアップでぶるぶる震えたり、強く握りしめたり)がなかなか作画もキレイで使いやすいので、挟むのにおすすめ。


ぱるさんからの1:57のあたりのアカギの墜落場面と「いい加減な恋の魔法〜」の歌詞で、あのカットを選んだ意味、という質問。
実は、この辺はかなり疲れていたので適当なカットを挟んだ(笑)。
アカギの墜落場面は、単に「青い空」と呼べる場面が鷲巣戦にはないので、背景が青い場面を選んだというだけ。ここいつも引っかかるんだよね(笑)「こんなに近くで…w」でも「ひとり」でも「空が青い」という歌詞が出てくるので、その都度別の場面から持ってきたり、赤い空にしたりと苦しい誤摩化しをしてますが。アカギが倒れるのは鷲巣さまにとっては晴れやかな気分でしょうから。
「天命待つ」のところはそのままでいいですよね?(ここは作りたかった場面のひとつ)
「いい加減な恋の魔法」というところは、そのまま合致する場面も特に思いつかず、脳内絵コンテでもなんとなく流していた部分なので、まず第一に「作画がキレイ」という理由でチョイス。ここの鷲巣さまテラウツクシス。犬の死骸は同場面にあったものをそのまま使っているだけです。アカギをこういう状態にしたい鷲巣さま、というだけ。
それと、序盤でチョイスしてある銃殺場面とのからみ(同じような場面を持ってくることによって全体の統一をはかる)、直後のスピーディなカット割りとのバランスをとってゆっくりな流れでタメる意図、「いい加減な恋の魔法なんかに頼るより、自分でつかんじゃいますよ」という歌詞の流れで「いい加減な恋の魔法」=まどろっこしい「奪いますよ」=スピーディ というイメージで編集しました。後ろの場面とのバランスというのが大きいですね、こうして見ると。

最後の方は正直かなり適当。力尽きてた。歌詞がなくなってからのメロディ部分、実はこっそりカットして曲を短くしてます。作る気力がなかったんだ…


んまあだいたいこんな感じですか。