カイジはしあわせになれるのでしょうか

福本マンガを机に…枕元に…要塞のように積み上げて読みふけり…前々から思っていた疑問が更に大きくなりました。

カイジって…最終的にどんな終わりを迎えるんだろう…???

「アカギ」は「天」で既に「その後の赤木しげる」が登場しているわけで、ある意味どう終わったっていい。「天」の終わり
は「天」というタイトル的にはいかがなものとは思うけど(笑)あれはあれで素晴らしい終わり方(キャラもえを抜きにしても、私はそう思う)。

カイジ」は…カイジはどう終わるんだろう…

たぶん、兵藤会長との決着(というかなんというか)を付けるまでは終わらないんだろうと思う。「堕天録」では坊ちゃんを倒して終わり(もしくは、坊ちゃんがカイジを再び地の底に突き落として終わり)な気がするので、最終的な決着は堕天録以降の新シリーズに持ち越されることになるんだろうなあ。
兵藤会長には既に一回、鼻であしらわれたような形で負けているわけで、リベンジしなければ話としてはおさまらない。また末端から入っていって、徐々に這い上がり、追い詰められた形での一発逆転狙いのギャンブル、っていう流れになるんだろうけど。
で、兵藤を倒したところでカイジはしあわせになれるかというと、たぶんそうはならないよね。
破戒録の冒頭で、悪徳金融の遠藤に「哀れなギャンブル狂い」と言われているように、兵藤を倒して仮に桃源郷の愉悦を手に入れ、莫大な金を手に入れても、カイジはしあわせにはなれない。たぶん、そのお金も一年もすれば使い果たしちゃう。ギャンブルで。
私はカイジが基本的に「いい奴」で、一度信頼した人間を決して裏切らないところに着目して、「カイジはどうやったらしあわせになれるんだろう。対人運が悪すぎるんだよな〜出会う人出会う人悪党/クズ/駄目人間だし。もし森田における銀さんみたいに信頼できる上司がいれば、カイジも這い上がれるんじゃないかな〜」なんて思ってたんだけど、最近カイジを一気読みした友人にそれを言ったら「それはない」と即返しされた。
彼女曰く


カイジの信頼って、すごい一方的というか… 船の話では、あの二人をそこまで信頼する方がちょっとおかしいよなあと思う」


…確かにそうだーーーー!!(笑)
あの状況で、あの二人をあそこまで信頼しても大丈夫、そして相手にも同様の信頼を強要するっていうのは、考えてみたらすごくおかしいよなあ。ありえないよなあ。しないよなあ。

私はそれまでは「だからカイジはお人好しなんだよね」と思っていたんだけど、これってもしかして「お人好し」ではなくて、ある種の逃避なのかなあと。
それまでの人生で得られなかった・そして現在も依然として得られていない「他者の信頼」を欲しがっている、だからこそ、ああまで信頼を大事にするし、一度やさしくしてくれた人は裏切らない(石田さんの息子の件に関してもそう)。
普通なら信用しないような場面でも信用しちゃうから、それがラッキーに転ぶ時もあるけど(チンチロの時とか)、
仮にカイジの前に銀さんがあらわれたとしても、あの盲目的かつ独善的な信頼を向けられたら(それは森田が銀さんに向ける信頼とは決定的に違う)例え銀さんでも、やっぱりカイジを切り捨てる方向に向かってしまうのかもしれない。それは決してプラスにはたらかない信頼だから。
結局、銀さんのような人物はカイジを見ても、せいぜい一回使い捨ての道具にして、分配金を渡してポイが関の山で「仲間」にすることはないのでしょう。


カイジの信頼って、一対一の信頼じゃなくてこう、なんか、「他人を自分の中に組み込んじゃう」信頼なんだよな。だから結構追い詰められるとムチャクチャな要求したりもするし(沼の最終局面とか)。信頼しているというよりは「オレがこうしてんだからオマエもこうしろ」自分と同じような犠牲を、相手にも要求する。だから、共闘して信頼関係築けているかといったら築けてない。で、絶望。ループ。
信頼っていうより「甘え」なのかもしれない(たぶん兵藤会長はそう言うだろう)。森田は銀さんを盲目的に信頼しているように見えるけど、銀さんに甘えてはいない。かなり序盤から「あの人を越えたい」と言ってるし、甘え一切ない(甘えそうな局面になると、銀さんも手を放す)。
堕天録でカイジが実はお金もってないんじゃないかと社長が疑う場面、居もしない「お金を運ぶ手下」をオレは信頼しているんだ!演技をしている時、あそこまでそらぞらしく響くのはきっとそういうことなんだ…

やっぱりここまで書いて「カイジはしあわせになれそうもないなあ…」と思いました。良い彼女でも出来るといいんだろうけど、出来そうにない(笑)美心なら、もしかして本当に献身的な愛をカイジに注いでくれるかもしれないのに。

破戒録のラストが、カイジの一番しあわせな姿なのかもしれないね。



そんなカイジが今月号のアフタ「おお振り」の阿部とちょっと重なった。阿部はズバリ言ってくれるお父さんがいてしあわせな奴だ。阿部にはがんばってほしいものです。